レビュー

「オペラの華」 ヴェルディ・プッチーニアリアコンサート

(2007年2月25日 23:12)

2月25日 オペラシティーコンサートホールにて

ー「オペラの華」-ヴェルディ、プッチーニ・アリアコンサートー

楽しいコンサートでした。ヴェルディとプッチーニのオペラのアリアのいいとこばっかり。それも、その曲を十八番とする歌手の方ばっかり。しかも、あわせるのは、オペラの東フィル。指揮は新進気鋭の村中大祐さん。

定番の「運命の力」序曲で始まりました。ヴェルディからは、「運命の力」「ドン・カルロ」「イル・トロヴァトーレ」「椿姫」「リゴレット」のアリア。後半はプッチーニ。「マノン・レスコー」の間奏曲で始まり、「トスカ」「ラ・ボエーム」「蝶々夫人」「ジャンニ・スキッキ」「トゥーランドット」でした。

去年の二期会「蝶々夫人」でデビューした、大山亜紀子さんは声量豊か、伸びのある声です。「運命の力」のレオノーラのアリア、トスカの「歌に生き、恋に生き」、蝶々さんの「ある晴れた日に」を歌われました。これからが楽しみな方です。

バリトンの成田博之さんは、「ドン・カルロ」の二重奏を福井さんと。「イル・トロヴァトーレ」のルーナ伯爵のアリア。「リゴレット」の「悪魔め、鬼め」とヴェルディ尽くしでした。成田さんはその実力でサントリーのホールオペラなどで世界的な歌手と対等に渡りあい、また、ソフトな語り口、華のある舞台姿でファンも多く、とても素敵な方です。

でも、なんといってもやはり今日の主役は澤畑恵美さんと、福井敬さんだったのではないでしょうか。

澤畑さんの「椿姫」の「花から花へ」は絶品でした。ヴィオレッタの苦悩、喜び、悲しみ、すべてを繊細に表現していて、超絶技巧のアリアなのにそれを微塵も感じさせずやわらかく、かつ情熱的でした。こういうアリアだけ歌う時、その歌手の技巧のすばらしさを披露している歌とか、声の力で観客を圧倒させるような歌を聞くことがあります。それは、それで「すごいな~」と単純に感心するのですが、今日の澤畑さんのアリアは、「歌でその役を表現して、その心をあなたに伝えているのよ」というまさに心に響く歌でした。

それは、福井さんとの「ラ・ボエーム」のデュエットでもそうで、情熱的なロドルフォ、慎ましいけれど、うちに強いものを秘めたミミ。舞台衣装も演出もないのにそこにまるでオペラの場面が見えるようでした。福井さんと澤畑さんは、国立音大の同期で、オペラ研修所も一緒。イタリアに留学された時期も一緒だそうです。(昔、福井さんが澤畑さんと共演されたコンサートのときにお話されていました。)大学時代には友達同士、遊びでオペラを歌っていたという、まさに「のだめカンタービレ」の世界だったそうです。そんな青春時代を共有されるお二人なので、この「ラ・ボエーム」もそのころの思い出も手伝って余計にすばらしい雰囲気を醸しだしていたのかも知れません。

いつまでも終わって欲しくない、アッという間の二時間でした。こんな楽しいコンサートなかなかあるようでない。また、是非再演していただきたいです。

 

 

 

 

福井さんは、一部の終わりで「女心の歌」、二部の最後に「誰も寝てはならぬ」と定番をうたわれたのですが、何回聞いても新鮮な気持ちで聞けて、そして、聞くと必ず幸せな気持ちになります。そう思っている人がいっぱいいるのでしょうね。コンサート後のサイン会は長蛇の列で、今日も福井さんは大忙しの様子でした。

   

サイト読者の方からのコンサート感想です。

3列目の真ん中という好条件で拝聴したコンサート、すばらしかったです。若いお二人は本当に実力があり、驚くほどの歌唱力でした。ベテランのお二人は、それに加えて、経験の蓄積がかもし出す「華」がありました。芸術は時間をかけて熟成され、そして次の世代へと伝わっていくのですね。  (A.Hさん)    2007年2月28日

「ヴェルディとプッチーニのコンサート、どの曲も良いけれど、一番のお目当ては福井さんの「冷たい手よ」。福井さんが、澤畑さんの手をとったところで、すっかり「ラ・ボエーム」の世界へ入り込んでしまいました。久々に聴いた福井さんの「冷たい手よ」は、情熱的で愛にあふれていて、世界を薔薇色に染め上げるかのようでした。本当にうっとりしました。澤畑さんが「私の名はミミ」を歌われている時は、福井さんはミミに恋するロドルフォの表情と演技で、椅子に座っていらっしゃって、その後の二重唱でロドルフォがミミの手に口付けをして、手に手をとって退場するまで、オペラを観ているかのようでした。私が初めて福井さんの生の歌を聴いたのは、「ラ・ボエーム」です。あまりの素晴らしさにそのまま大ファンになりました。ずっと、ずっとまた観たいと恋焦がれていた「ラ・ボエーム」の一場面を予期せず観ることができて、感激で胸がいっぱいになりました。(Y)  2007年2月27日