レビュー

都響スペシャル「第九」  

(2008年12月26日 19:38)

2008年12月26日19時開演

サントリーホール

ベートーベン 歌劇「フィデリオ」序曲、  交響曲第9番 ニ短調「合唱付」

指揮  アレキサンドル・アニシモフ 

ソプラノ 澤畑恵美  メゾソプラノ 竹本節子

テノール 福井敬  バリトン 福島明也

合唱 二期会合唱団 合唱指揮 斉藤育雄

ソロ・コンサートマスター 矢部達哉


 

 

 

 

とてもおおらかな演奏でした。指揮者は今年9月に二期会の「エフゲニー・オネーギン」を振ったアレクサンドル・アニシモフ。最近の第九演奏では、すごく早いテンポで新しい表現を試みる指揮者が多い中、彼は、ちょっと古い形、といっては失礼かも知れませんが、神経質でなく、テンポもゆったりして、あくまでもおおらかに、オケも歌も歌わせるタイプの指揮者のようでした。ある意味、とてもオペラティクな第九で、第九ってこんなロマンティックな感じの曲だったっけ?と思いました。

一番びっくりしたのは、3楽章が終わってから、合唱もソリストも入ってきたこと。曲が中断される事を嫌って、最初から合唱が舞台に入るケースが多いのに、その間、指揮者は指揮台から降りて待っていたのです。そして、みんながスタンバイすると、おもむろに第4楽章が始まりました。彼にとっては、第4楽章が別物の音楽という捕らえ方だったのでしょう。こんな解釈もあるのかとちょっと驚きました。

都響の第九は、福井さんはじめ、ソリスト、合唱もみな二期会のベテランメンバーで、いつも安心して聞いていられます。その土台があればこそ、指揮者のいろいろな冒険に応えられるのでしょう。この秋は福井さんの東京での演奏会が余りなかったので寂しかったですが、久々に輝く声を堪能できて、大満足でした。