レビュー

浜離宮ランチタイムコンサート

(2009年1月22日 14:18)

2009年1月22日11時30分開演   浜離宮朝日ホールにて

福井敬テノールリサイタル   ピアノ 谷池重紬子

プログラム

グリーグ 君を愛す 
瀧廉太郎 荒城の月 
瀧廉太郎 秋の月 
瀧廉太郎 箱根八里 

山田耕筰 

ペチカ 
山田耕筰 あわて床屋 
武満徹 恋のかくれんぼ 
武満徹 ぽつねん 
武満徹 死んだ男の残したものは 
武満徹 小さな空 

休憩

ロンバーグ 《学生王子》 より<セレナード>
ブロードツキー ビー・マイ・ラブ 
マスネ エレジー 
マスネ オペラ《ウェルテル》 より<春風よなぜ我を目覚めさせるのか>
ララ グラナダ 
プッチーニ オペラ《トゥーランドット》 より<誰も寝てはならぬ>

アンコール  落葉松、女心の歌

浜離宮ランチタイムコンサートは、お昼の時間帯に良質で本格的な音楽と、その後提携レストランのお食事がセットされたコンサートです。もちろん、コンサートだけでも良くて、今回も2800円というお値段で福井さんのコンサートを堪能しました、お昼の時間帯ですから、来れる方は限られていて、今回も年配のご夫婦、ご婦人がほとんどでした。

福井さんのリサイタルの今回のプログラムは、そんなお客様を意識して作られたものらしく、クラシックの歌曲を余り聴いた事がない方でも、またディープなクラシックファンにとっても楽しめるプログラムでした。

前半は、日本歌曲。福井さんがリサイタルで武満徹の曲を初めて歌われました。私の中では、福井さんの日本歌曲といえば「荒城の月」でした。もちろん、他にもいい曲が一杯あるのですが、この曲を福井さんほど朗々と歌い、しかもこの一本調子で単純な旋律なのに、これほど聴くものの心を捉え、ドラマを見せてくれるような歌は他の人ではまねできないと思っていました。そのほかにもどちらかというと、明治から戦前の歌が多いので、日本歌曲は何か懐かしい感じ。。という印象がありました。しかし、今回は武満徹が入ったことで一挙に身近になりました、作詞も谷川俊太郎で、現代詩はよりストレートに私達の様々の思いを表現してくれます。それを福井さんが歌うのですから、ぐっと来ないはずがありません。「死んだ男の残したものは」では、泣きながら聞いた人が一杯でした。私も泣いてしまいました。福井さんの日本歌曲はこれからさらに深く、ますます広がっていくような気がします。

後半は、ガラリと河って、テノールの名曲といわれるような、福井さんのオペラの声を堪能できるプログラムでした。お約束の会場を回りながらの歌、今回は学生王子のセレナードを、舞台の後ろの扉から歩きながら歌っての登場でした。ビーマイラブ、ウェルテル、グラナダとどんどん調子も上っていって、壁が壊れないか、天井が抜けないかというぐらいの声量とハイCの連発でお客様はもうトランス状態。黄金に輝く声のシャワーを存分に浴びる事ができました。

前半と後半で、全く違う世界を見せてもらったこの演奏会。仕事を休んで行ったかいがありました。

読者の方から感想を頂きました。

こんにちは。今回のコンサートは福井さんファンの友人2名と計3名で行きました。
コンサートの翌日から頭の中を福井さんの「箱根八里」の歌がぐるぐる回っています。
瀧廉太郎さんの「荒城の月」は以前から好きでしたが、
「箱根八里」がこんなにもかっこ良い歌とは思いませんでした。
福井さんの日本の歌を聴く時は映像がありありと見えるのですが、
今回も箱根の切り立った山々が次々と浮かびました。
瀧廉太郎さん作曲の歌をまとめて3曲続けて聴いたのは初めてで、
日本美をこれほど素晴らしく作曲した方だったのかと気付かされました。
今度はぜひ、瀧廉太郎さん中心のコンサートを開いて欲しいです。
 当日は寒くて体が冷え切っていたのですが、
「ペィチカ」と歌われた「ペチカ」はとても温かくて、やっと体が温まりました。
福井さんの歌はいつも実際に体に効果があって、本当に驚きです。
 武満徹さんの曲は「恋のかくれんぼ」恋愛ドラマ、「ぽつねん」ヒューマンドラマ、
「死んだ男の残したものは」ドキュメンタリー、「小さな空」人情ドラマと
多岐に渡った濃厚なドラマを見た満足感でいっぱいでした。
武満さんといえば現代音楽で素人には近づきがたいというイメージがあったのですが、
わかりやすい音楽もあったのかと友人たちと口々に話しました。
 後半は欧米の歌曲とオペラアリア。
「春風よ、なぜ我を目覚めさせるのか」を初めて聴くのでとても楽しみにしていました。
迫力に圧倒されてしばらく動けませんでした。
オペラのアリアを小さいホールで聴くのは最高に贅沢だなと思いました。
美しい音楽に加えて知る楽しみと発見があるワクワクしたコンサートでした。
ありがとうございました。(Y)