レビュー

神奈川県民ホール「トゥーランドット」

(2009年3月29日 09:17)

神奈川県民ホール 大ホールにて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009年3月29日 神奈川県立ホールにて
神奈川県民ホール主催オペラ『トゥーランドット』2009年3月
(神奈川県民ホール・びわ湖ホール・東京二期会・日本オペラ
連盟共同制作公演) 撮影:竹原伸治

指 揮: 沼尻竜典
演 出: 粟国 淳

トゥーランドット: 並河寿美
カラフ:  福井 敬
リュー:  高橋薫子
ティムール:  佐藤泰弘
皇帝アルトゥム:  田口興輔
ピン:  迎肇 聡
パン:  鈴木徹太郎
ポン:  二塚直紀
役人:  西田昭広

合唱:  びわ湖ホール声楽アンサンブル・二期会合唱団
児童合唱: 赤い靴ジュニアコーラス
管弦楽: 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

3月にびわ湖、神奈川と2箇所であった「トゥーランドット」日本人キャストだけ、これだけハイレベルの公演が見られるのは凄いことです。沼尻さんは10年ぐらい前にオーチャードホール文化村トゥーランドットとして、福井さんと演奏会形式で何回もこの演目をやっておられますし、神奈フィルも福井さんと演奏会形式でトゥーランドットを何回かやっており、満を持してのオペラとして公演だったと思います。。

ですから、今回は特に演出がどうなるか興味しんしん。しかし、心配は杞憂で最高の舞台でした。このオペラは中国が舞台でインパクトのある内容と音楽ですから、演出もそれにあわせてというのが多いのですが、とても美しい舞台でした。同時代の映画「メトロポリス」というのをヒントに、「ある時代」「ある世界」のファンタジーという演出でした。オーソドックスな中国スペクタクルを想像する方には不満かも知れませんが、私はとても気に入リました。機械の中で抑圧された民衆、アニメの大臣に出てくるような衣装のピン・ポン・パン。皇帝が登場するところなど、アイーダを見ているような華やかさと美しさがありました。おどろおどろしい演出で、音楽に入り込む前に嫌悪感を感じてしまう事なく、本当に最後のハッピーエンドを楽しく迎える事ができました。やっぱりオペラはこうじゃなくちゃ!

音楽は、もう期待どうり。福井さんは当然一番の大迫力で、大音響のオケ、合唱にかき消される事なく素晴らしい声で私達を圧倒して下さいました。「最後はぼろぼろです。」なんておっしゃっていましたが、リューの死からのアルフィーノの補筆された部分。トゥーランドットとの掛け合いは、ワーグナーのような雰囲気で演出も不思議な感じでとても素敵でした。「ここってこんなに良かったっけ?」と新たな発見がありました。リューの高橋さんは、声も雰囲気も衣装もリューにぴったり!しっかり泣かせていただきました。トゥーランドット姫の並河さんは、美しい声だったので、今までの姫のイメージからは少し離れていましたが、それでも演技と表現で姫の強靭さをアピールしておられました。

オケは、びわ湖の京都交響楽団も、神奈川フィルもとても良かったです。最後に舞台の上にオーケストラの団員が上ってお客様の拍手に応えるというカーテンコールでしたが、とてもあたたかくていい雰囲気でした。オペラは歌だけではなく、オーケストラも演出も衣装も証明もみんなで作り上げる総合芸術、マエストロの心意気を感じ、沼尻さんやったね!と叫びたくなりました。

早速読者の方より、感想を送っていただきました。いつもありがとうございます。

今回の「トゥーランドット」で一番好きな場面は2幕目の謎解きを終えたカラフ王子を、トゥーランドットが拒絶してそこでカラフ王子が歌う歌 「No, no, Principessa altera! Ti voglio tutta ardente d’amor!」「全身愛に燃えている貴女を私は望んでいます」七色の光がほとばしるような美しさで本当に素晴らしかったです!! 他の方たちのCDでは聴き流してしまうところをあまりにきらびやかに情熱的に歌われたので気持ちも体も浮き足立って、ふうっと一瞬体が浮かびあがるようでした。
そういえばここで初めてカラフ王子はトゥーランドットに想いを告げることができて、ああ、本当に姫のことを好きなのだなと想いの深さも感じ取れましたし、きっと、トゥーランドットもこの情熱的な美しい声に心が揺らいだのだなあと納得することができました。この場面で心をがっちりと摑まれ、最後まで高揚した気分で観ていました。 
楽しくて悲しくて感動して、オペラが終わった後は真面目な顔が難しいくらい
ニコニコ顔の自分を鏡で見るのが嬉しくて、何度も鏡を覗き込んでしまいました。福井さんの素晴らしい歌を聴くたびに自分のことをどんどん好きになっていきます。(Y) 

 私が初めて「誰も寝てはならぬ」という曲を知ったのは4年前。自分たちの演奏会(吹奏楽ですが)で仲間の1人がソロでこの曲を演奏したのです。今まではオペラには全く興味がなく、というよりもセレブの方々しか入れない世界だと思い込んでいました。あまりにも興味をそそるタイトルに「ねぇ、どういう流れで『誰も寝てはならぬ』になるの!?」と聞いたことを覚えています。更に荒川静香さんの金メダルでもっと知ることになり、ついに本物の歌(福井さん)に出会いました!そして先日、初!オペラを見ることが出来ました(>_<)いつもなら舞台にいるオケが観客よりも下にいるのがなんとも不思議な空間に感じられました。席は3Fで舞台より遠かったのですが、福井さんの歌声がオケや合唱よりも高く澄んで聴こえてきました(☆。☆)そして第3幕。リサイタルなどで何度も聴いた事はありますが、まさに歌われるべきあの場面での「誰も寝てはならぬ」は本当に素晴らしかったです。ようやく長年の疑問!?があの瞬間に理解できたのです♪物語的には私はハッピーエンドが好きなので、カラフとトゥーランドットはよかったね!なんですが・・・リューの悲しすぎる愛を想うと2人を心から祝福できないのは私だけでしょうか(?_?)当日熱を出し残念ながら行くことが出来なかった娘のために、是非また見に行きたいと思いますp(^^)q今後のご活躍を心からお祈り申し上げます。本当にステキな時間をありがとうございました。

びわ湖のトゥーランドットについてのブログhttp://sake-onnna-uta.at.webry.info:80/200903/article_6.html

神奈川のトゥーランドットについての音楽評論家東条碩夫氏のブログhttp://concertdiary.blog118.fc2.com/blog-entry-442.html

日本経済新聞夕刊 2009年4月7日

 


読売新聞夕刊 2009年4月7日


 

 

 

 

 

読売新聞2009年3月26日(YOMIURI ONLINE)中部発

http://chubu.yomiuri.co.jp/kyoiku/tokai_plaza/plaza090326