レビュー

ナポリの新風 ペルゴレージ と 若き モーツアルト

(2010年9月25日 09:26)

カペラ・アウローラ クニタチ 第三回演奏会
  ナポリの新風  ペルゴレージ と 若き モーツアルト
 
          国立音楽大学 講堂小ホール
          2010年9月25日(土)14時半開演
 
第一部
W.A.モーツアルト 交響曲第5番 変ロ長調 K.22
 
G.B.ペルゴレージ 《サルヴェ・レジーナ》ハ短調
  独唱 小泉 惠子
 
G.B.ペルゴレージ ヴァイオリン協奏曲 変ロ長調 第2第3楽章
  独奏 大関 博明(コンサートマスター)
 
第二部
G.B.ペルゴレージ 室内カンタータ 《オルフェオ》
  独唱 福井 敬
 
W.A.モーツアルト 交響曲第29番 イ長調 K.201
 
ペルゴレージは、1710年生まれ。わずか26歳で亡くなったこの作曲家の生誕300年を記念して、音大楽器資料館が所蔵する18世紀の弦楽器・管楽器を音大の先生方が演奏して当時の音楽の響きを現代に蘇らせるという、大変貴重なプログラムでした。


ペルゴレージの名前も初めて聞く私でしたが、美しい旋律と現代楽器とは明らかに違う18世紀の楽器の音色の温かみ、響きの優しさ、素朴さにすっかり魅了されました。最初のモーツァルトは、なんと9歳(!)の時の、最後は18歳の時の作品です。
モ-ツァルトも36歳で世を去っていて2人とも夭折の天才ですが、作品はその後何百年も生き続けて、後世に感動を与え続けるのですね。


さて、今回のプログラムの目玉は、福井さんの歌う《オルフェオ》だそうです。当時は、カストラートが歌っていて、現在までのCD録音はソプラノが歌っていたそうです。これは、ギリシャ神話のオルフェオとエウリデイーチェが原作で、愛する妻エウリデイーチェを突然失ったオルフェオが悲嘆にくれて探し回り、妻を必ず連れ戻す強い決心と共に、もし連れ戻せないならあの世で永遠に・・・と愛を歌う というお話し。
夫の役なので、本来あるべき男声に戻して役柄の人間性を直接体現してみました・・ということでした。


レチタテイーボ(朗唱)1 → アリア1→ レチタテイーボ2→ アリア2 という形式です。いわゆるバロックオペラのベルカント風音楽で福井さんの歌を聞くのは新鮮な驚きでした。

ただ、正直言って音楽的にはソプラノのような高い声が、また作品本来の男声にするのなら、ただあっさりと感情込めずに美しーく歌うだけのテノールが、合っているのかも知れない。アリアの部分は、切迫したドラマテイックな表現がまるで、オテロなのにモーツアルトのような宮廷衣装を窮屈そうに着て、顔も黒いし、金髪巻き毛のカツラも浮いてて・・・でも、歌ってみたら素晴らしく上手!みたいな(?)違和感と不思議な魅力がありました。


 
歌でドラマを語らせたら天下一品の福井さんのチェンバロにのせてのレチタテイーボには引きこまれて、うっとりするほど素敵でした。
ずっと、語って欲しい!と願うほど。
声よし、演技よしの方だから朗読劇なんて、どうでしょうか?NETコンサートでやっていただけないかしら・・・?