レビュー

鎮魂のレクイエム (3月26日 東京交響楽団定期公演より)

(2011年3月26日 10:23)

2011年3月26日午後6時開演   サントリーホール  

東京交響楽団第587回定期演奏会

モーツァルト:レクイエム二短調 K626より

ベートーベン:交響曲第3番変ホ長調 作品55「英雄」

指揮 小林 研一郎 
ソプラノ 森 麻季 
メゾ・ソプラノ 竹本 節子 
テノール 福井 敬 
バリトン 三原 剛 
混声合唱 東響コーラス 
合唱指揮 樋本 英一 

冒頭、東日本大震災で亡くなられた方への黙祷が捧げられました。
 
モーツアルトの「レクイエム」
亡くなられた多くの方々への鎮魂、被災地におられる方々の計り知れない困難さ、そして報道でその惨状を見ている我々の心の痛みとなんとか頑張って生き抜いて欲しいという祈り。
言葉にできないそれらの苦しみ、つらさ、悲しさ・・を今宵の音楽は、表現してくれました。
 
小林研一郎マエストロと共に素晴らしい演奏をされたオーケストラ、真摯な気持ちが込められ、直前の曲目変更にもかかわらず、暗譜で歌った東響コーラスの大迫力、また、余震の恐れのある中をサントリーホールに駆けつけ、ピンが落ちてもわかるほどの静寂で音楽に集中し、祈り続けたこの日の聴衆。音楽を通して,演奏する者と聴く者の気持ちが一つになって、共に祈り、涙を流したサントリーホールは大聖堂の中にいるような«聖なる»空間でした。
                                         

ラクリモサ(涙の日)の部分は、犠牲者に捧げられ、ソリストも合唱と共に歌い、我々の思いよ、天上の被災者の魂に届け!というようにマエストロが人差し指を天に向けて立て、アーメンが永遠に続くかのように長く響きました。
音楽って、本当に力がある、素晴らしい、と思いました。
 
福井さんは、舞台での振る舞い、歌唱、そして休憩時には義捐金を募り、とたいへん素晴らしかったです。
改めて、被災されたすべての方々に安寧が訪れますように、お祈り申し上げます。
(Collina)