レビュー

プッチーニ 歌劇「トゥーランドット」

(2011年7月 6日 18:30)

東京二期会オペラ劇場 【二期会創立60周年記念公演】

7月6日、7日、9日、10日

東京文化会館大ホールにて

指揮:   ジャンルイジ・ジェルメッティ  
演出:   粟國 淳  
       
トゥーランドット姫: 横山恵子  
カラフ(王子):    福井 敬 

リュー:      日比野 幸                                                        皇帝アルトゥム:    田口興輔  
撮影:小林孝良           ティムール :     佐藤泰弘
                     ピン(大臣):      萩原 潤  
                     パン(大臣):        大川信之 
                     ポン(大臣) :       村上公太 
                     役人 :              小林昭裕 

                   合唱:二期会合唱団
                   管弦楽:読売日本交響楽団 

トゥーランドットは、見どころは満載のオペラで、ちょっとあげても、1幕の「泣くなリュウ」から、銅鑼を鳴らすところ。2幕のピン、ポン、パンの幕間劇。3つの謎解きの場面。3幕始めのカラフのアリア「誰も寝てはならぬ」。リュウの死のアリア。など
どの場面が好きなのかは人それぞれだと思いますが、私の個人的な好みとしては、謎解きのあの緊張感あふれる場面が好きです。ただし、今回のトゥーランドットではすごい見どころ、ここが肝というところを発見しました。

リュウの死のあとの、カラフとトゥーランドット姫の愛のシーン。福井さんと横山さんの凄い歌のおかげで、トゥーランドットの最大の見せ場はあの後半から始まる二人の愛の表現のアリアだとわかりました。ここを表現するために今までのドラマがあったのかと。

その上、指揮者はオーケストラをたっぷり鳴らし、見せ場ごとに盛り上がっていきます。マエストロは、イタリアの重鎮の方で、かなり早いテンポで進み、オケと合唱がオペラを盛り上げ、迫力満点でした。そして場面転換が早く、どんどん続きを見せていく感じがしました。リュウの死のあとも、途切れること無く感情移入していくことが出来ました。

福井さんが「ぶらあぼ」のインタビューでも熱く語っておられたトゥーランドットの本当の意味、凄さをまざまざと実感できた瞬間でした。トゥーランドットはよく知っているオペラだけに、知っているという先入観がありましたが、今回の演奏でまた新たな発見があり、とても新鮮な気持ちと充実感を味わうことが出来ました。

「ぶらあぼ」6月号のぷれすてーじ福井敬インタビュー、http://www.mde.co.jp/ebravo/bo  ok/201106/#page=28

 

 


                 

 

オーケストラの早いテンポに体の中におもちゃ箱をひっくり返したようなワクワクした気持ち。打楽器が鳴るたびに手や足を振り回して駆け回りたいようなウズウズした気持ち。
それでいて、静かで美しい合唱の曲の時は清涼な風が吹いて体の色を透明にしてくれるような不思議な心地良さ。筋は知っているのに、次の瞬間は何が起こるのだろうと最初から最後まで期待でドキドキした舞台でした。


 産経ニュースのインタビューの中で、福井さんは「(カラフ)はトゥーランドットが愛に目覚めることで、平穏な社会が取り戻され、人々が勇気と希望をもって生きることができると固く信じているのです。」とおっしゃっていました。その思いをそのまま舞台で感じました。常々不満のカラフのリューに対しての態度も納得できました。

トゥーランドットに対しての迷いのない真直ぐな意思力とパワーと真摯な姿勢に夢をかなえるにはまずは、こういった姿勢が必要なのだなと自分に欠けていたものに目を開かれた思いです。いつもはどうしてもカラフを非難したくなる「泣くなリュー」もやっと出会えた父親と一緒にいたいけれど、夢の実現のためにできない辛さが伝わってきて泣けてきました。
 
横山恵子さんの非の打ち所のないトゥーランドット姫の歌を聴きながら、これほどの怒りが簡単に溶けるのかなあと一瞬疑問に思ったけれど、そこは、やはり福井さんの暖かく情のある歌声にトゥーランドットも私の心もすっかり説き伏せられたのでした。

それにしても、楽しくて楽しくて最後のハッピーエンドを迎えて、また気持ちが盛り上がって、これほど、充実感があって幸せな気分になれるなんて信じられないです!!
また日々の生活を勇気と希望をもって頑張ろうと思いました。 (Y)