レビュー

マーラー「大地の歌」(2)

(2011年12月 9日 19:00)

「大地の歌」
 
中国の漢詩を題材に作曲された交響曲で、ヨーロッパの音楽なのにそういうものもありなのかと新鮮に驚きました。でもよく考えたら、オペラの世界では数多くありましたね。
 
まずは、福井さんの七色の声にうっとり。
 
福井さんの歌の部分の第一,三、五楽章は李白の詩が題材になっていて、内容はだいたい「現生を忘れて酒を飲んで楽しもう」なのですが、第一楽章に何度も歌われる「生は暗く、死もまた暗い」が歌の楽しさの底に常に感じられました。
 
聴いているうちに、世界の誰よりも博識で、人望に厚く、友人も多い、でも底なしの暗さを抱えていて誰も救うことができない人物像が浮かんできて、絶望の淵を覗いた気がしてぞっとしました。こんなに壊れた心をリアルに表現できて、一体生身の福井さんは平気なのだろうかとつい心配になるほどでした。まだまだ、福井さんの歌の真髄を全て理解していないようです。こんな人物が出てくるオペラをぜひ観てみたいと思いました。(Y)


 最近、このように演奏会の感想を投稿してくださる方が増えてきて、とても喜んでいます。ありがとうございます。歌を聴いて抱く感想は人それぞれ。音楽を聞いて、何か感じられるなんて、とても素敵なことです。それが、どんな感想でも正解はないはず。また、そんな歌を歌われた福井さんに改めて敬意を表します。(管理人より)