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2月22日 「ドン・カルロ」 感想(投稿)

(2014年3月 3日 21:27)

かっこいい! 

福井さんの王子ドン・カルロ かっこよすぎます! スペインのプラド美術館で見たカルロス王子の肖像画は、精神的不安定さを感じさせ少々不気味な姿だったし、ウイーンの美術館で見たカルロ像は、青白い顔と未発達で ひ弱そうな体に描かれていました。

                                                           

冒頭、フランス王女エリザベッタとの出会いを回想して歌われたカルロの歌『フォンテーヌブロー 広大な森よ』の素晴らしかったこと。太く、深い声はまるで森の隅々まで届くような堂々とした男らしい歌でした。最後のロングトーンも力強くなめらかに伸びて、絶好調です。

                                                                    

そしてこの時、福井さんは弱い王子の苦しみ、悲しみをそのまま演ずるつもりはないんだ、と感じました。若く、強い王子であったとしても思うに任せぬ大きな壁に塞がれ、重圧に苦しみ砕け散る姿を気高く演じていくつもりなのだと。                             

                                                              

5幕まで基本的に変わらない白い石造の列柱と床というシンプルな舞台。そして16世紀のスペイン そのまま再現という豪華衣装の素晴らしさ。振り付けもきれいで、まるで動くスペイ ン絵画を見ているようでワクワクします。クールでスタイリッシュな舞台は具象性を排除して,苦悩そのものを立ちあがらせているように思えます。

                                                                                                         

Bキャスト(2月20日)の方々も大熱演で、キャストはみなさん若く、美しく、華があり、王子や王妃の役にピッタリでした。 でも、Aキャストの福井さん達は、単に(王子の役を歌う)とか(王女になりきって演じる)というレベルを超えていました。                      

                                                                   

王子の歌、という形を通してヴェルデイが伝えたいメッセージ、人間の夫々の立場で の弱さ、出口の見えない苦しみ、怒りそして昇華、といったものを音楽と体で表現しようとしていたようでした。王子、と いう役の規模を超越した、とても大きなエネルギーでした。未熟で愚かな王子の悲恋物語に演出されたドンカル ロが多い中で、福井さんの演じた、男らしく強く気高い王子像は福井さんそのものなのでしょう、このオペラの見方を変えてしまうものでした。                                                   

                                                             

成田さんとの『友情の二重唱』は、とても丁寧に息を合わせていて、男同士のかっこ よさにあふれて素敵~でした。 ハッピーな場面がなかった中で、ベールをかぶったエボリ公女を王妃と思いこんで恋 心を歌う Sei tu, sei tu・・ の希望に満ちた鮮やかな歌声が耳から離れません。                                                

(2月22日) (Collina)