レポート・感想

「午餐会コンサート」の感想

2017/05/26

公演: 【5月24日完売 26日追加公演】午餐会コンサート ~古のイタリアの調べとともに~

午餐会ということで、代官山の貴族の邸宅のようなレストランで、見目麗しく凝りに凝ったお料理をいただき、お腹も心も豊かになったところでコンサート。

 アントネッロの奏でる古楽器による中世音楽の調べに耳を傾け、福井さんの情熱的な歌を聴いて、ハッと気付いた。絵空ごとではなく、中世の人々も情熱を持って、実際に生きていた人々だったのだということを。と同時に、イタリア中世の貴族の音楽会にリアルにタイムトラベルをした気持ちになった。豪華な館の一室で、着飾った人々に囲まれ、ハープやリコーダーの音色に恋の歌。音楽会の扉の外は小説のような恋の駆け引き。こんな雰囲気だったのか。

 イタリア語はわからないけれど、どんな内容かは福井さんの歌を聴けばよくわかる。考えるより先に恋の炎がボッと体の中で燃え上がる。そうかと思えば、胸がキュウッとしめつけられる。ヒストリカルハープとヴィオラ・ダ・ガンバの音で貞淑な貴婦人の気持ちになる。超絶技巧の笛の音に精霊の存在を確信する。

アンコールは1968年のオリヴィア・ハッセー主演の「ロミオとジュリエット」。 今回の音楽会で演奏された初期イタリアバロック音楽は、1600年代の日本でいえば、徳川時代。そして、最後にシェイクスピアの時代でもあったのだよとイタリアのヴェローナを舞台にした音楽を聴かせてもらえるなんて、(音楽は映画製作時のものらしいが)ぐっとくる演出だなあと思った。なによりも、福井さんが切なく歌う「ロミオとジュリエット」ああ、もうどうしても、現実世界に戻れない。(YY)


宮崎国際音楽祭 『椿姫』

2017/05/18

公演: 宮崎国際音楽祭 ヴェルディ 歌劇『椿姫』

このオペラで一番好きな所は、ヴィオレッタが「花から花へ」で♪快楽を追って、楽 しく生きて行くのよ♪と

歌うのに、遠くからアルフレードの愛の歌が聞こえてきて、芽生えた恋心とせめぎ合 いになるところ。

愛は全宇宙の鼓動・・・とは、なんて大きなことを言うのでしょう。

舞台袖からテノールの声だけを聞かせることが多いシーンだけど(それも想像力を刺 激して楽しいけれど)今日は、バルコニー席に

姿を現して歌われた、素敵な演出。バルコニーの手すりを掴み、身を乗り出すように 歌う様が情熱的なアルフレードだった。

2幕 ヴィオレッタがアルフレードに「私を愛してね、私があなたを愛するように愛 してね」と歌うところが、このオペラの頂点かな?

男は女性の重い決意の言葉を軽く聞き流す。いつも、ここでヴィオレッタの心情を思 い、ヴェルデイの劇的な音楽に涙が溢れる。

福井アルフレードはここで、ふんふん・・とあまり身を入れて聞いていない風だっ た。

フローラの夜会に現れた時の冷静を装ってにこやかに登場するところ、激高して大金 を投げつけるところ、ハッと我に帰り、

なんてことをしてしまったんだとボー然とするところ・・・いつもながら、若者アル フレードになりきった演技が本当に

上手だった。

中村恵理さん。欧米で御活躍の名声を聞いていたので、今回の共演を楽しみにしてい た。張りのあるスピントの声のみずみずしさ。

言葉一つ一つがくっきり立って聞こえる明確な発声。一気に高音へ駆け上がる正確 さ。素晴らしかった。

福井さんの大きな翼の上で、安心して歌っているように思えた。

父ジェルモン役のシュレーダー氏の、知的で穏やかな役へのアプローチも声の上品さ もいいなあ、と思った。

ライナーキュッヒルさん率いるバイオリンの音色の美しさ、特に3幕冒頭の演奏、こ こはこんなに綺麗なんだ!と。

広上さんの指揮は、オペラを退屈させない。緩急自在、盛り上げが上手で、歌手の聞 かせどころでの呼吸もオケとバッチリだった。

宮崎の聴衆のこのオペラを一年間待ち焦がれていた、というワクワク感も相まって、 とっても素晴らしい、幸せな演奏会だった。  (Collina)


素晴らしいヴェルディでした

2017/05/14

公演: 宮崎国際音楽祭 ヴェルディ 歌劇『椿姫』

【終演】宮崎国際音楽祭 ヴェルディの世界「愛に生き、愛に死す」 歌劇「椿姫」(全曲)コンサート形式

ヴィオレッタ 中村恵理 アルフレード 福井敬 ジョルジョ アンドリュー・シュレーダー 指揮 広上淳一

中村さんのヴィオレッタ凄かった!福井さんはいつもの熱演。安定の福井品質です!広上さんの指揮はいつも素敵!オペラの指揮者ってこうでなくちゃね〜!

コンサート形式で音楽に集中できる宮崎国際音楽祭のオペラ上演。ますますファンになりました。


アリアと合唱 名曲の午後

2017/03/26

公演: アリアと合唱 名曲の午後(千葉県)

今年初めての生の演奏会でした。

やっぱりオペラの音楽は楽しくて「カルメン」や「トスカ」のアリアに

テンションがどんどん上がりました。

その中でも、福井さんのオテロは最高でした。

合唱と共に歌う「帆だ!帆だ!帆だ!」

客席と客席の間の通路から

嵐の中を生還したオテロのまばゆく光輝くような声!

リアルに英雄の存在を感じました。

オテロと可憐な腰越さんのデズデモーナとの二重唱。

甘美な世界にうっとりして体がとけそう。

寒さに縮こまっていた体からすっかり解放されて

幸福感にゆったりと浸りました。

時々オテロの不安や辛さが心に流入してヒリヒリしたけれど

コンサートの良いところは、2幕目に進まないこと。

話の結末に身を固くする心配がなくて、初めてこの曲の素晴らしさに気付きました。

最後は「誰も寝てはならぬ」

いつも、この歌を聴くとパワーをもらって

頑張ろうという気持ちになります。

終演後に鏡を見たら、久しぶりに生き生きとした自分の顔にびっくり。

福井さんの歌を聴かせていただくことが、健康と美容に一番良いのだなあと

しみじみと思いました。

ありがとうございました。(YY)


「ラインの黄金」終了しました

2017/03/06

公演: ワーグナー作曲 『ラインの黄金』全1幕

びわ湖ホール プロデュースオペラ「ラインの黄金」終了しました。

ミヒャエル・ハンペの演出は、プロジェクションマッピングでワーグナーのストーリーを全編クリアに映し出すもの。全く読み替えなどいらないので、歌詞、舞台、音楽が全てマッチしています。物凄くわかりやすいワーグナーでした。ワーグナー初心者でも全く楽しめます。これからのリングの続きが楽しみです。

終演後の楽屋で虹の神フローの福井さんと、雷の神ドンナーの黒田さんのツーショットを撮らせて頂きました。 なんか、ご兄弟みたいです。 衣装もリアリティを追求したもので、キラキラ光っていて、まばゆい感じでした。


ニューイヤーオペラコンサート 2017

2017/01/06

公演: 第60回 NHKニューイヤーオペラコンサート

1月3日、恒例のニューイヤーオペラコンサートを聴きに行きました。

初めて行った2007年、このNHKホールで「誰も寝てはならぬ」を歌った福井敬さんと

初めて出会いました。他の誰とも全く違う、輝くような美声の響きと強烈な存在感に衝撃を受けました。

歌の神様がここに降りてきているようでした。以来、10年間毎年こうしてお正月のNHKホールに来ることは

私にとっての初詣のようなもの。今年はどんな歌を聞かせていただけるだろう?とワクワクする思いです。

今年1年の福井さんのご健康と益々のご活躍を祈り、今年もできる限りの演奏会に駆けつけようと誓いました。

入魂の一曲、大好きな「ウエルテル」 ホール中に響き渡り、ドラマテイックな迫力でした。

(Collina)


「美しき水車小屋の娘」感想 3

2016/12/15

公演: シューベルト「美しき水車小屋の娘」

稀代の名手の歌う「水車小屋」の凄さに、一週間ほど腑抜けになっていました。

・・・小川の底に星が沈み 銀河が雪崩れてゆく気がした・・・

松田聖子ちゃんが歌いそうな歌詞に、さすが!松本隆さんだ!と感心してたら

ミュラーの原詩でも確かにそのように書かれていました。松本さんの超訳ではない

日本語の言葉選びのセンスはやっぱり、すてきだなあ~と感じました。

CDで聞いていたときには〈体育会系〉な音楽だなあ、という印象でした。

アスリートのように極限まで実力を発揮しようという切れ味鋭い音楽。

12年後のこの日、初めて聞いた生演奏では、横山さんのピアノはまろやかで

手を鍵盤に置くと自然にピアノが歌いだすというような滑らかさ。

そして、福井さんの磨き抜かれた美声と縦横無尽の表現力の素晴らしさ!

粉の白さ、リボンや木々の緑色、青い花・・鮮烈な色彩が飛び出してきました。

粉ひき青年の明るい希望から始まり、恋の喜び、葛藤、嫉妬、苦悩、そして死へ向かう

ドラマを固唾をのんで聞いていると、息が苦しくなってしまい、№12休憩(!)で一度、

間を置かれたのは聴衆も一息つけてありがたかったです。

青年の入水とともにホールにも青い水があふれ、私も川底に沈んでピアノの音色とたゆたっている

ように感じました。哀しさと救済された安堵感が混ざり合ってホッとしつつ泣きたいような

甘悲しい余韻が素晴らしかったです。

福井さんの描く若者像、青年と言うより少年は、パルジファルの時も思いましたが、

世界名作児童文学の登場人物のように清潔感があり、ナイーブで、とってもすてきです。

「水車小屋」を歌いきった解放感からの「魔王」の爆発的でイキイキした歌唱は楽しかったです。

(Collina)


シューベルト「美しき水車小屋の娘」感想2

2016/12/10

公演: シューベルト「美しき水車小屋の娘」

横山幸雄さんのピアノを生で初めて聴いた。

今まで知っていたピアノの音とはまるで違うので驚いた。

軽やかで、全てに虹がかかっているような音色。

「美しき水車小屋の娘」で粉挽き職人の若者が希望に満ちて旅に出た様子を

横山幸雄さんのピアノで聴いたら、ワクワクして、体が勝手に動きだした。

止めようにも止められずに、制御不能になった体は、ピアノの音色になすがまま。

福井さんの歌が始まったら、頭の天辺から足のつま先まで

体の内側がスクリーンになって、歌の映像が映し出されるようになった。

木々の緑  揺れる金髪  透き通った川の水面

緑のリボン  青い花

全てがまぶしいくらいの鮮やかさ。

「月は東に星を誘って 銀の水鏡 二人で覗いていた」

こんなに美しい風景に心震わせたことあったかな。

若者の心が私の心に流入する。

私は、若者になってしまった。

幸せな気持ちで駆け巡りたくなる。

ほんの些細な出来事に心を左右される。

心は、踊ったり、落ち込んだり目まぐるしい。

嬉しさと辛さと寂しさが同時に渦巻いて気が狂いそうになる。

一流の芸術家が二人揃うと

感動は、2倍ではなく、何乗にもなる。

強烈すぎる美の世界にとても耐えられない。

心も体も全てピアノと歌に支配されてしまい、逃れようがない。

私の感動受容能力はとうに決壊した。

終演後、ふらふらになって、悲しいわけでもないのになぜか泣きながら

あまりに高みに到達した「美」は恐ろしいと思いました。 (YY)


ブロガーShevaibraさんより臨場感あふれる感想 「美しき水車小屋の娘」

2016/12/09

公演: シューベルト「美しき水車小屋の娘」

各界のトップ・ランナーが集ったプロジェクト シューベルトの水車小屋の娘の日本語訳詞ヴァージョンのライブ披露である。

火花飛び散る展開というべきか。横山の超絶技巧に福井のオペラティックなワグネリアンな唯我独尊世界 聞き応えがあった。

日本語で歌われる快活な青年の恋の喜びと苦しみ 絶望 諦観 昇華がリアルに迫ってくる。ドイツ語とは別物と思って聞くべきだ。アンコールは魔王 これは超絶すばらしかった。

***

冒頭のアヴェ・マリア あまりにもパワフルでぶっ飛んだ。 ワーグナーチックなアヴェ・マリア とても素敵です。

横山さんのシューベルトの即興曲の前に長大なトーク。とても楽しんだ。横山さん 多分生演奏は初めて聴く。ショパンの全曲演奏は映像で聞いた。タッチがすばらしく溶けるような音色。ヴィルトゥオーゾでめっちゃ速くて、それなのに硬さを感じさせず夢のよう。美しすぎる!

後半 いよいよ「美しき水車小屋の娘」

快活に若々しく、希望にあふれて歌う。

恋の喜び

恋人を飽くことなく見つめる

ぼくのものだ!

<いったんそでにはける>  パウゼ

恋人は緑のリボンが好き。

猟師

嫉妬とプライド

好きな色

悲しみ

嫌いな色

すばらしい!Ade

枯れた花   

すごくゆっくり歌う。

前半の高音 ソット・ヴォーチェ

冬は去り、もう五月

「去り」で胸声の高音

声を張る

すばらしい!

入水

悲哀

星空に抱かれる

水底で。

川の子守唄

前半の曲のメロディライン

ピアノのリズミカルな響き、これは川のさざ波なのだ。強くなったり優しくなったり主人公を包む。

全曲了

大拍手

アンコールは魔王

父親と息子 魔王とナレーションの四役を見事に演じた。  すばらしかった。

Shevaibra

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スペシャルリサイタル感想

2016/12/01

公演: 2016年       福井敬スペシャルリサイタル

前半に、子守唄が3曲

ああ、美声な方に歌っていただく子守唄は

まったくなんて贅沢なんだろう。

自分が子どもにどんどん戻って、ホッとして、安心して、慈しまれているようで

全ての尖ったストレスが体の中から溶けていく。

無防備な心で聴く「さとうきび畑」は本当に辛い。

一転して、金子みすゞさんの「このみち」

言葉にすると気恥ずかしいけれど、未来に夢や希望を持って

子どもの時のように素直に前向きに頑張ろうと思う。

1年分のエネルギーをチャージして

後半は、輝く声全開。

うわあ~っとテンションが上がって

もうそのまま、上がりっぱなし。

うっとりしたり、ちょっと怖くてドキドキするような歌だったり。

中でもジョルダーノ "愛さずにはいられぬこの想い"

福井さんの情熱さとかっこ良さがぎゅぎゅっと凝縮されている。

なぜ、今まで本番で聴いたことがなかったのか

なぜ、ベストプログラムに入らないのか不思議でたまらない。

聴いていた時間は短かったけれど、心に残った時間はずっと長い。

ぜひ、また歌って欲しいです。(YY)


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