今回のお目当ては、こちら。福井さん4年ぶりの「トゥーランドット」です。
2011年7月の二期会公演では、ひるむことなく突き進む若々しい青年を情熱的に
演じてとても素敵でした。その後、数々のワーグナー作品やオテロを歌われた現在、
どんなカラフが聞けるのかしら・・と楽しみに向かいました。
リューは岡田昌子さん。2008年にミューザ川崎では、トゥーランドット役で
福井さんと共演しています。当時まだ大学院生だった岡田さんの張りのある高音と
強い声、そしてトゥーランドット姫のイメージ通りの美貌にワクワクしながら見て
いた記憶があります。その彼女が今回はリュー。リューは健気な女奴隷。
王子カラフの恋の成就の為にわが身を犠牲にする献身で泣かせる役。
岡田さん〈小さなかわいいリュー〉どころか、堂々とした姫 でした。
自己主張の強い現代っ娘の姫。忠誠心でティムールを介抱してここまでたどり着いた
というよりも王子カラフに会いたい一心で、王さえも道具にして?
トゥーランドットはシューイン・リーさん。優しく、華やかな歌声は聞く人の心を
とらえます。こちらは、姫と言うよりリュー。とてもカラフを拒絶しているように
は聞こえない。むしろ初めて会った瞬間にこの人と結ばれるのだと予感したような、
半分観念してるように聞こえました。
そして、そして、カラフの福井さん。現代っ娘リューに追いかけられ、トゥーラン
ドット姫が一目惚れするのも納得のカッコいいカラフでした。2011年公演では
『国敗れる前からカラフは放浪の旅に出ていたのかもしれない。
究極の美を求める旅に。そして最高の美をトゥーランドットに見出したのだ。』と
インタビューで語っていた福井さんですが現在はもうそんな青いことは言いません。
姫もこの国も我が物にする、それが私の運命なのだ!とゆるぎない自信に満ち溢れた
壮年カラフ・・・そんな風に聞こえました、と音楽評論家の方に話したら、
『それじゃ、お話が違っちゃうから駄目だよ~』と言われてしまいましたが、
歌手の内面の変化や声質の組み合わせでちょっと違って聞くのも面白いな
と思いました。この演目の為に組織された若い学生中心の合唱団はびっくり
するくらいの声量で思い切り歌い、広上さんの指揮に煽られたオケの出す音の
大迫力と相まって疾風怒涛のトゥーランドットでした。
全席完売となったホール総立ちのスタンディングオベイションが長く続きました。
宮崎国際音楽祭20周年にして初めてのオペラ全曲演奏を大成功に導いた福井さん
の存在感に改めて感服しました。 (Collina)