福井敬スペシャルリサイタル 感想3

2015/11/13

公演: 福井敬スペシャルリサイタル(東京)

第一部の日本歌曲は、福井さんのこれまでの人生のアルバムを見せて頂いているよう

に感じながら、聞きました。

ずっと昔、幼いころに背負われて見ていた「赤とんぼ」~ 砂山に腹ばいになって

「初恋」の痛みに思いをはせる日~

10年の月日がたって、1つ1つ希望を失った「木兎」~過ぎ「ゆく春」を

惜しむようなセンチメンタルな時を過ぎ~

僕は「結婚」してしまったー、と茶目っ気で照れたり、~山の上の一本の「さびしい

カシの木」は今ではとっても年をとり、

さびしいことに慣れてしまったー、と孤高の境地を歌い、「死んだ男の残したもの

は」命の継続こそ、明日を生きる希望なのだと

~「夢みたものは・・・」ひとつの愛、願ったものは、ひとつの幸福、それらは

すべてここにある・・・と締めくくられました。

季節の移ろいに人生の来し方、行く末を投影し、すべての出来事を受け留めて

肯定する、大きな愛のストーリーのように感じました。

第二部の「トスカ」と「オテロ」の世界

砂川涼子さんとの共演は、想像通りゴージャスなものでした。間近に聞く

お二人の歌唱の迫力と華麗なお姿。

特に砂川さんの「柳の歌」のすばらしいことといったら、美しいお姿と相まって、

まさに完璧。

福井さんのオテロはやっぱり、はまり役です。「恥と悲しみに満ちて」は

迫真の演技だったあの3月のオテロが蘇って、くぎづけ です。

「オテロの死」では自害するシーンを、顔の表情の変化だけで表現して

いましたが、ほんとうに死んでしまったのでは?と

心配になる見事さでした。中身のとても濃い、渾身のプログラムで

贅沢なコンサートにしてくださって、ありがとうございました。

(Collina)