今をときめく29歳の大人気指揮者と福井さんの共演が、やっと実現。藤沢オペラでの素晴らしかった「道化師」を再び・・と
福岡に飛びました。エネルギーを全身から放射するような情熱的な指揮で、イタリアらしい明度の高い、色彩豊かな音楽が奔流となって
ホールをドッと満たしていきました。カニオ(福井さん)が登場してすぐ歌う「みなさん、今晩23時に芝居に来てください」が
張りのある伸びやかな声で気持ち良かったです。ventitre ore! の甘い声が今も耳に響いています。
妻ネッダ(嘉目さん)の浮気を目にし「愛されていなくても、せめて同情くらいはしてくれていると期待していたのに・・」の
せつないくだりは、可哀そうで心をぐっと掴まれてしまいました。カニオが逆上して妻を刺し、愛人シルヴィオ(塩入さん)の
名前を聞き出そうとするたたみかけていく緊迫感。役になりきって演じ、観る者をドキドキさせる福井さんの真骨頂。
ただ、やり過ぎれば品を失ってしまう、そのあわいのギリギリを表現する見事なこと。刺し殺すシーンも、シャープな所作と表情だけで
キメる小気味の良さといい、圧倒的な舞台姿の美しさに感じ入りました。 (Collina)