2時間20分休憩なしで一気に上演するのにプロジェクションマッピングによる映像の力は
欠かせないものでした。幕が上がるとそこはノルウェー船の甲板で、吹きつけてくる風や
押し寄せる波しぶきの映像がとてもリアルで瞬時に物語の世界に引っ張り込まれました。
ダーラント(妻屋さん)の声には演技力があって、財宝目当ての抜け目なさも、ちょっぴり
お茶目なところも船長の威厳もそれぞれ味のあるいい歌を聞かせてくれました。
オランダ人船長(青山さん)の深々と響く高貴なお声のすごさ。舵手の(清水さん)リリックで
若々しい歌い回しの気持ち良さ。ゼンタは(橋爪さん)は、暗くてオタク気質なゼンタではなくて
運命の人を救済したいと願う可憐なテイーンの女の子でした。皆さん揃って最高のキャストだと
思いました。でもやっぱり、2幕でエリック福井さんが『ゼーンター♪』と切りこんでくる第一声の
見事なこと!急にドラマが回りだします。3幕でゼンタをかきくどくシーンでは舞台の温度が2℃くらい
上がりました。そこからのオランダ人との3重唱が本当に素晴らしかった!
オランダ人が去り、ゼンタが海に飛び込み、船が波間に消え、・・とたたみかけてくる怒涛のエンデイングに
心が躍り、ワーグナーなのに楽しくって拍手をするのが待ちきれませんでした。
全ては舵手の夢でした・・という今回の演出に最初は、こんな熱演なのに夢オチでいいのかな?と思い
ましたが、最後の「救済の動機」の何ともハッピーすぎる現実的でない音を聞いてるうちに、夢の中で
都合よくハッピーエンドにもっていったみたいにも感じられて、これでいいのかもと納得いきました。
でも、夢にするのなら、福井さんが歌っていたように、「エリックの見た夢」にしてほしかったな。
(Collina)