「トリスタンとイゾルデ」の感想です

2016/09/18

公演: ワーグナー作曲「トリスタンとイゾルデ」全3幕

なんと言っても3幕目は別次元の素晴らしい舞台でした。

福井さんの緊迫した歌。舞台から一瞬たりとも目が離せなくなりました。

トリスタンの歌を聴くと、一瞬、一瞬が苦痛で、一瞬一瞬が甘美。

一緒にイゾルデをじりじりと待ちわびざるをえなくなる。

早く!早く!ああ・・・!

トリスタンの死に、イゾルデの心同様押しつぶされました。

最後のイゾルデの歌。胸にせまりました。私には、見えました。

イゾルデが歌うようにはっきりとトリスタンの微笑む姿が。

どんどん高まっていくオーケストラの音楽。

舞台の上は光と影がぐるぐる回る死の世界。今まで体験したことのない感覚。

彼岸の世界に私も足を一歩踏み入れてしまったのではないだろうか。

これ以上、この歌と音楽を聴き続けたら、気が狂ってしまう。

幕が降りる。涙がどっと溢れ出す。深呼吸を繰り返す。頭と体の中は空になった。

媚薬を飲まされたのは私。ワーグナーの音楽は血にからみつき、体の中をぐるぐる回る。

何も手につかず、嬉しくて辛い音楽を今も求め続けている。(YY)