「ラ・ボエーム」感想3 遠征されたYさんより

2017/08/06

公演: 奥州市文化会館25周年記念事業 プッチーニ作曲『ラ・ボエーム』(岩手県)

私ごとではありますが、11年前精神的に落ち込んで

何をしても楽しくもなく、イライラして、毎日暗闇の中を歩いているようでした。

これではいけないと、昔行って楽しかったオペラを観に行ったり

衣食住足りて暮らしているのだから、周囲に感謝をして過ごさなければと

唱えてみても、まったく効果なし。

そんな時に、福井敬さんの「誰も寝てはならぬ」をテレビで聴いて

感動でぽっと心の中に灯がともった気がしました。

新聞広告を見つけて福井さん主演の「ラ・ボエーム」を観に行きました。

内容も歌もわからずに見始めて、登場人物が多くて誰が福井敬さんかもわからず

「冷たき手よ」の歌のところで、初めて福井敬さんだ!とわかりました。

と同時にわあっと世界がピンク色に染まり、あんなに真っ暗だった世界が

お花畑に一変しました。

あまりの歌の美しさに自分の細胞の一つ一つが総立ちで、

歓喜の叫びをあげているようでした。

嬉しくて嬉しくて嬉しくて心の底から喜びが湧き出てきて

微笑まずにはいられない。

それからは、福井敬さんの大ファンになったのは、もちろんだけれど

なにごとも明るく前向きに考えられるようになりました。

心が明るくなると体調も良くなって、持病の喘息の発作も出なくなりました。

これほど、感動の舞台を観る機会があった自分の幸運に、感謝するようになりました。

ただ、残念なことは、初めて観たのでどんな歌だったのかまったく覚えていないこと。

何枚も何枚も「ラ・ボエーム」のDVDを買い込んでは、懸命に思い出す作業を繰り返しました。

ずっと切望していてやっと観ることがかなった「ラ・ボエーム」は予想以上の素晴らしさでした!

一音一音が暖かくて情熱的で輝きを放つ福井さんのロドルフォ。

確かに、人生を一変させる歌だなと納得しながら聴いていました。

歌だけでなく、ロドルフォの思わずクスリと笑ってしまうコミカルな演技、

最後のミミが亡くなる場面を待たずして、別れの四重奏の前の

「ミミの病気の原因は僕なんだ。」という場面での悲しみの表現の深さに

胸を打たれました。

「ラ・ボエーム」で楽しみにしていることが、

ムゼッタがいかにハチャメチャに弾けてくれるかどうか。

伊藤晴さんのムゼッタ、色気はあるし、期待以上の弾けっぷりでした。

加えて、市民オーケストラの方の演技も秀逸で

クリスマスの雑踏の細かい演技や子供たちの可愛らしさも良かったけれど

ムゼッタが足が痛いとスカートをめくりあげた時に、

集まった男の人たちのダッシュの速さ、

それを引き離そうと男性の足を引きずっていく女の人たちの演技、

本当に面白くて、気持ちがさらに盛り上がりました。

今回のボエームは私にとって、最高のボエームでした。

今度は、いつまでも体の中で音楽が鳴り響いています。

思い出すたびに幸せ。

本当にありがとうございました。(YY)