福井さんが歌うと日本歌曲がもっと魅力的になる

2017/10/29

公演: 2017年 福井敬スペシャルリサイタル IN 東京  スペシャルゲスト黒田博を迎えて「オペラな男達の響振。日本歌曲の鼓動。」

冒頭の「からたちの花」の甘く優しい歌声で始まったステージは、白くやわらかな大輪の花が咲き

こぼれるような華やかさでした。「六騎」のえもいわれぬ色っぽさ。「サルビア」の熱い情念。

福井さんの様々な面を楽しめます。

この日の一番は「秋桜」でしょうか。母と嫁ぐ娘のシーンを歌いながら、私に見えてきたのは、

遠く離れた地に住む老いていく母への愛情、感謝、惜別と決意を歌うように聞こえて、ぐっと

きました。続く「さとうきび畑」では声の演技力が素晴らしく、父を思う切なさが伝わって、

泣かされました。前半最後の、まど・みちお作詞の「おんがく」はとても素朴でかわいいステキ

な歌詞で、この曲を選ばれた福井さんの音楽への純粋な気持ちを感じました。

第2部は、黒田さんとお二人の大迫力の声の饗宴を堪能しました。カルメン

での息の合った二重唱に、長年の友情と信頼の厚さを感じ、この二人を決闘させるカルメン

っていったいどんな女性かなあ?と想像しても思い浮かびませんでした。

大好きなドン・カルロの友情の二重唱は福井さんの伸びのある気持ちいいお声と、低音を支える

黒田さんのかっこいい声。オペラな男たちの響振とは、これか!と。

ホール中に響く美声のパワーの粒子が降り注いで、マイナスイオンを浴びるよりも

もっともっと元気になれました。

いい時間を積み重ねてきた大人の醸し出す自信と色気と覇気に満ちた、

充実のコンサートでした。誘った友人たちからも「六騎」と「さとうきび畑」が

特に好評で、喜んでくれました。(Collina)