レビュー
ダフネ
(2007年2月14日 23:26)
リヒャルト・シュトラウス作曲牧歌的悲劇「ダフネ」日本初演
オペラの原曲ともいうべきギリシャ神話をもとにした美しくも切ないダフネの愛の物語
会場 東京文化会館
[演出]大島早紀子 [指揮]若杉弘
[演奏]東京フィルハーモニー交響楽団
| 2月10・12日 | 2月11日 |
ペナイオス 漁師 ダフネの父親 | 池田直樹 | 佐藤泰弘 |
ゲーア ダフネの母親 | 板波利加 | 村松桂子 |
ダフネ | 釜洞祐子 | 佐々木典子 |
ロイキッポス ダフネに想いを寄せる羊飼い | 樋口達哉 | 大間知覚 |
アポロ | 福井 敬 | 青栁素晴 |
奇跡のようにすばらしいプロダクションでした。「歌もすばらしい。ダンスもすばらしい。」と聴いていましたが、まさかここまでとは!シュトラウスのオペラといえば、主役級の人々はすごいスタミナとテクニックが要求され、外国オペラの引越し公演の定番みたいに思っていました。なのに、今日の二期会のオペラは。これをそのまま外国に引越し公演したらいいんじゃないの?と思うぐらいでした。
何しろ、ダフネ役の釜洞祐子さん。アポロ神役の福井敬さん。ロイキッポス役の樋口達哉さん。樋口さんは、これが二期会デビューだそうですが、新人とは思えぬ堂々とした歌いっぷり。将来が楽しみです。釜洞さんはオペラで聞くのは初めてでしたが、こんなすごいソプラノだったとは知りませんでした。そして、福井さん。アポロ神の神々しさ、そして神ならではの傲慢さを見事に表現してらっしゃいました。鳥肌ものでした。
また、今回はマエストロ若杉と東フィルの音楽作りのすばらしさに感謝です。シュトラウスって、きれいなんだけれど音が途切れなくて・・。、すごくいい演奏だと、言うにいわれぬ心地よさを感じるのですが、そうでないと疲れてきて必ず眠くなっちゃうですよね(シュトラウス好きの人ごめんなさい)。今日はまさにシュトラウスに酔わせていただきました!弦がどこまでも美しく、管も要所で決めて、全体のバランスもとってもよくて、音楽全体がうねっていて本当にすばらしかったです。マエストロと東フィルにブラボー!
そして、今回このプロダクションを大成功に導いたのはやはり、演出の大島早紀子さんと、彼女率いるダンスカンパニー「Hアールカオス」の方々のダンスでしょう。短いオペラとはいえ、登場人物の動きも少なく、たった1幕で場面の転換も難しいこのオペラ。しかも、音楽は鳴りっぱなし。このすごいダンス・パフォーマンスのおかげで全体の雰囲気を理解できるし、歌のないときはダンスを見て堪能できる。すばらしいダンスにブラボーが飛び交っていました。
サイト読者からもさっそく感想をいただきました。
で最後の場面になりました。福井敬さんは野生的でわがままにみえるアポロが神
であることを歌とただずまいから誰にも納得させ、釜洞祐子さんからは清らかな
乙女の気持ちが痛いほど伝わってきました。本物の大島早紀子さんを拝見して、
この方がこの舞台をと納得も出来ました。舞台の端から端までの緊張のなかで人
も装置もすべて一体となって・・・とにかく一つ一つの場面が印象深く、とても
言葉では言いつくせません。
一瞬の舞台に持てるものと時間とをすべてかけるということが芸術と思いながら
も、これだけのすばらしいオペラがこれで終わってしまうのは余りにももったい
ないと思います。再演を願っています。
(Y.O) 2007年2月13日