インタビュー

福井敬さんインタビュー④ 江川紹子さんと対談「初めてのオペラ」

(2007年7月 6日 00:29)

今回は、ジャーナリストの江川紹子さんにお願いして、福井さんを芸大のレッスン室におたずねし、

対談形式でのインタビューをしました。


江川・・今日は、福井さんの芸大のレッスン室にお邪魔することになって、光栄です。

 

福井・・いやいや、ようこそお越しくださいました。

江川・・fukuikei.netの読者には福井さんを知って初めてオペラを見るようになったという方もかなりいらっしゃいますが、今日は、福井さんにとっての“初めてのオペラ”をお聞きしたいなと思ってお邪魔しました。福井さんは子どもの頃からオペラに親しんでいらしたんですか。

福井・・(子供の頃は)オペラを見る機会はなかったですね。ただ、テレビで劇団四季のミュージカル、最近も話題になりましたけど《ユタと不思議な仲間たち》などを見たりして、音楽があってお芝居もあってというのをおもしろいな~とは思っていました。

江川・・では、福井さんが初めて生でご覧になったオペラは何ですか。

福井・・初めて見たオペラは《愛の妙薬》(ドニゼッティ作の2幕のオペラ)です。私は岩手県の出身なんですが、高校2年生のとき藤原歌劇団の地方公演を盛岡で見ました。日本語の訳詞による上演で、配役は五十嵐喜芳さんのネモリーノ、本宮寛子さんのアディーナで、ベルコーレは田島好一さん、指揮は福森湘先生だったと思います。

江川・・当時の日本のトップクラスの方々ですよね。それで、初めてご覧になったオペラ。どんな印象でしたか?

福井・・私は当時吹奏楽をやっていたので、実はオペラを見に行くというより、どちらかというとオーケストラに興味があって、その演奏を聴きたいと思って行ったのです。オペラについては「オペラってどんなものだろう?」という程度でした。それで実際に見てみると、音楽で話しが進んでいくでしょう。ただのお芝居じゃなくて、音楽がつくことで、音楽によって自分の気持ちも高められていく。オペラって楽しい、いいものだな。と思いました。

江川・・予習とかしていったのですか?

福井・・全く白紙で行って、あらすじも知りませんでした。でも、《愛の妙薬》は楽しいオペラですし、日本語での公演でしたから、初めて見ても内容が分かりやすくてとても楽しめました

江川・・ご覧になって、自分もやってみたいと思われましたか?

福井・・そうですね。実は、この公演にあわせて、私の高校の音楽鑑賞教室で藤原歌劇団の合唱団と五十嵐さん、本宮さんがいらして演奏会があったのです。五十嵐さんがカンツォーネや、合唱団と一緒に「乾杯の歌」を歌われました。ついこの前のオペラで主役を歌っていた有名な歌手がそこにいるというのは格別でしたね。ちょうどそのころ、自分の進路について、音楽がいいかな、と思い始めていた時期なんですね。楽器はどうかな?という気持ちもあったんですが、このオペラや演奏会が、歌も勉強してみようというきっかけの一つになりましたね。

江川・・初めて見るオペラって大事ですよね。

福井・・ええ、それはそうだと思います。第一印象というのは大切ですからね。物語のわかりやすさという点では、オペラの場合、時間の制約もありますので、できるだけ肉をそぎ落としてシンプルにストーリーを伝えるようになっていますが、悲劇でも喜劇でも、感情移入しやすい作品が、初めて見る方にはいいのではないでしょうか。その意味では、日本人に人気のあるプッチーニやヴェルディのオペラなんかは、分かりやすいかも知れませんね。

江川・・私の初めて見たオペラは「トゥーランドット」だったんですよ。

福井・・そうですか!どちらでご覧になったんですか?

江川・・Bunkamuraオペラ劇場で。福井さんも3年連続で出演されましたよね。残念ながら私が最初に見たのは、福井さんが出演されていない方のキャストだったんですが。でも、翌年には福井さんのカラフを聞くことができて、本当に圧倒されました。

福井・・江川さんにとって、初めてのご覧になったオペラはいかがでしたか?

江川・・とにかく「びっくりした」という一語に尽きますね。大きなホールでマイクも使わず、声が隅々まで響いてすごい。それに音楽が本当にきれいでうっとりしてしまいました。アッという間に過ぎてしまって、ほんとになんて楽しい世界なの。何で、今までこんな素敵なものを知らなかったのかと思いました。実はそれまで、オペラというとハイソな方々が見るもので、私なんか場違いと思って敬遠していたんです。初めての時も、上の階でひっそり見ていたんですが、行ってみると、お勤め帰りの方が普通の格好でいらしていて、「私が行っても大丈夫」と安心しました。それからはすっかりオペラにはまってしまって、特に福井さんを知ってからは、ますますオペラに夢中になってしまいました。

福井・・ありがとうございます。

江川・・いい作品は何度でも見たいし、予習をしていけば楽しみも深まりますが、その一方で、初めてでも、予備知識がなくても、楽しめてしまうのがオペラなんですね。

福井・・そうですね。いろいろな楽しみ方ができると思いますね。私だって、はじめは楽器の興味からですし。演劇的な面からドラマがどういう風に動いていくかに関心を持つ方もいらっしゃいます。バレエだってありますからね。もちろん、歌を一番楽しみに来られる方もいらっしゃいます。色んな要素が絡みあって初めてできるのがオペラですからね。それぞれの興味や関心にあわせて、いかようにも楽しんでいただけると思うんですね。    いろんな窓口があって、そこからのぞいてみると、いろんな世界が広がっている。そこにオペラのおもしろさがあるんじゃないでしょうか。

江川・・初めて見るオペラとして「仮面舞踏会」はどうでしょうか?

福井・・大人の愛を描いているオペラですから、なかなか渋いかもしれませんが、音楽がすばらしいですからね。音楽の迫力を感じていただければ、初めての方でも十分楽しんでいただけると思います。字幕もちゃんとついていますから、恐れずにはじめての方でも見ていただきたいですね。

江川・・そうですね。私も楽しみに見に行きます。次は、福井さんの初めての出演されたオペラについて、お聞きしていきたいと思います。