レビュー

ヴェルディ「レクイエム」

(2009年11月 1日 13:19)

2009年 11月 1日 (日) 午後2時開演    東京芸術劇場 
 

日本フィルハーモニー交響楽団  サンデーコンサート


指揮:藤岡幸夫
ソプラノ:並河寿美
アルト:竹本節子
テノール:福井敬
バス:久保和範
合唱:日本フィルハーモニー協会合唱団

久しぶりの福井さんのヴェルディ、楽しみました。日本フィルハーモニーのサンデーコンサートで、合唱団はアマチュアなので、その知り合いとられるお客様が多く、会場はほぼ満席でした。藤岡さんの指揮は初めてでした。欲を言えば、指揮、オケともにもう少しヴェルディらしいうねりが欲しかったところです。この曲はレクイエムといえども、ヴェルディらしい艶っぽさに溢れたオペラティックな曲。鎮魂の歌といいながら、世俗の欲が満々といった感じの曲ですから、そんな感じがもう少しあればよかったです。その点、ソリスト陣はやはりオペラで活躍しているベテランばかり、福井さんや竹本さんの色気。並河さんのパワー、久保さんの美声。ソリスト4人の大健闘でした。


読者の方から、素敵な投稿を頂きました。ありがとうございます。

東京芸術劇場で行われた、ヴェルデイの『レクイエム』コンサートに行ってきました。

前日に広尾を散歩していたら(この辺りには各国の大使館が多くあります。)外国人の子供たちが、かわいい魔女やガイコツの仮装をして、オレンジ色のパンプキンのかごを持ってゾロゾロと歩いていました。キリスト教のカトリックの暦では、11月1日が万聖節、前夜がハロウイン、そして11月2日は,〈死者の日〉なんだそうです。この日には、全ての死者の為に魂が天国へ行けるようにと祈り、ミサを行うそうです。だから、この日のレクイエムだったんですね。
前もってミラノスカラ座の来日公演のレクイエムを聞いて(テレビです)曲を覚えて、一曲ずつに合唱、ここはソプラノが歌う、と書き込み、テノール独唱の所は目立つように色を変えたカンニングペーパーを作り、それをちらちら見ながら、聞きました。
テノールのアリア『我は嘆く』美しい曲で大好きです。これを福井さんが歌ってくれるなんて!うっとりと、聞きほれました。
全体的に、メゾソプラノの出番が多いのですが、竹本節子さんは、穏やかな声でとても素敵に歌われて、これなら天国に行けそうな感じでした。ソプラノの並河さんの、高い声を聞いてるうちに、三月のオペラでのトウーランドット姫を思い出しました。ヴェルデイのレクイエムが、宗教的ではなくオペラ的過ぎると批判されたという話が納得できました。
極めて美しく、情熱的な音楽です。西洋のカトリックの教会で、ミサ曲を聴いているというより、日本のどこか古いお城の崩れかけた城壁をバックに、小袖を着た女性が並河さん、侍姿の福井さん、いにしえの戦いで失われた命を弔いつつ歌っている、そんな情景を想像していました。ソリストの皆さんが、単に美しい声で、神さまを称えて歌ったのではなく、死者への祈りを込めて叙情的に歌われたので、ドラマテイックな日本歌曲のように聞こえたのですね。洋の東西を問わず、死者のために祈る思いというものは、人々の中に根付いているのですね。(C)