レビュー

福井敬テノールリサイタル in 岩手

(2010年9月20日 11:04)

福井さんの出身地岩手。ふるさとでのコンサートに岩手県在住の方より、「我こそはおかっけるぞと言うファンの方、是非いらしてください。」という呼びかけがありました。これは追っかけてくださった方々からの演奏会報告です。

皆さま、ありがとうございました。


 

 

 

福井敬テノールリサイタル
2010年9月20日(祝)奥州市文化会館Zホール大ホール
ピアノ:谷池重紬子
第一部
1         グリーグ 君を愛す
2 瀧 廉太郎 (作詞:土井晩翠)   荒城の月
3 山田耕筰  (作詞:北原白秋)   待ちぼうけ
4 小林秀雄   (作詞:野上彰)   落葉松
5 中田喜直  (作詞:寺山修司) 悲しくなったときは
6 武満徹   (作詞:谷川俊太郎) 恋のかくれんぼ
7 武満徹   (作詞:谷川俊太郎) ぽつねん
8 武満徹   (作詞:谷川俊太郎) 死んだ男の残したものは
9 武満徹   (作詞:武満徹)   小さな空
 
第二部
10 ロンバーグ  ミユージカル「学生王子」より セレナーデ
11 フォーレ    夢のあとに
12  ビキシオ    マリウ、愛の言葉を
13  プッチーニ  オペラ『トスカ』より  “妙なる調和” 
14  ヴェルディ  オペラ『リゴレット』より “女心の歌”
15  プッチーニ  オペラ『トゥーランドット』より “誰も寝てはならぬ”     
 
アンコール
 
彼女に告げて
つれない心(カタリカタリ)    
さとうきび畑   全員で一緒に

福井さんの故郷である水沢でのリサイタルに行って来ました。
会場の奥州市Zホールはとても大きく立派な外観で、1500人収容の大ホールが、福井さんを温かく迎える大勢の市民でほぼ満席でした。

『君を愛す』で始まったプログラムは、第一部は、福井さんお得意の日本の歌曲をじっくり聞かせました。美しい歌声と、ドラマを聞かせる力の強さに、会場からはホーッというため息や、素敵ねえ…という声があちこちから聞こえました。
武満徹の作品では、いつものようにすすり泣く声や、目を拭う姿が・・・。


私の大好きな『落葉松』は、「高校時代に吹奏楽部でトロンボーンを練習するのは、部室の外の松林だった」こと、「秋になると松の葉が落葉してその音は、まるで雨の音のようだった・・・そんなことを思い出しながら歌っています」と前置きして歌われました。
そんなお話も、水沢で見た美しい松の木々の印象とだぶって、福井さんの歌う時のイメージが共有できたようで、嬉しかったです。
 
第二部は、ミュージカルやオペラのアリアをこれぞ、福井さんという素晴らしい声で華やかに!客席を歌いながら周ってくださった時はお客さんもわーっと沸いて、立ち上がって握手を求める人も・・・。


福井さんの歌は、いつもながら素晴らしくて大満足でしたが、この日は溢れそうになる感情をギリギリのところで堪えて歌っているような、情感豊かで、とてもウエットで、胸に迫るものがあり、聞いているこちらがなんだかドキドキしました。


リサイタル終了後、「ちょっと、緊張しました。」と福井さんはおっしゃっていましたが、これが昔からの知人、友人、お世話になった人たちに囲まれて歌う、故郷での特別なリサイタルの雰囲気なのだなあ・・と、その場に居合わせることができた幸せに感謝しました。


ホールを出ると目の前には、収穫中の稲穂が積み上がり、一面の田圃は黄色く色づいて、大きな空には美しい月が出ていました。
どこまでも広がる田圃と大地、広ーい空・・・福井さんの育った場所で、福井さんを愛する人たちと一緒に彼の歌を聞くことができた、
幸せな一日でした。
COLLINA

 

福井さんの故郷は空が広いなと思いました。どこまでも平野が続き、道路や家や店はどこもかしこもゆったりと広いスペースがとってあり、町をぬけると広大な田園風景が広がっていました。澄んだ空気の中で秋風が心地良かったです。福井さんはこのような環境で育ったのかとただぼんやり思っていたのですが、コンサートが始まってびっくり。今まで何回も聴いたことがある歌の風景ががらりと変わり、たった今、見てきた広い風景がくっきり。自分の心と外の風景がそのままつながったようでした。こんなに歌の感じ方が違うとは、歌手の故郷で聴くということは、特別すごい経験なんだと思いました。


  3曲聴いた時点ですでに完璧に心が満ち足りて、淀んでいたものがすっきりと洗い流され、魂が本来持っているはずの健やかさを取り戻した感じがしました。
  歌はもちろん、歌と歌の合間のお話も毎回、面白くて大笑いしました。
  

 後半のオペラアリアは誰が聴いても感動で思わず立ち上がり、ブラボーと叫びたくなる曲ばかり。第二部の始まりで福井さんが後ろの客席のドアから入り、
 「学生王子」をぐるりと客席をひと周りしながら歌われたときは、あまりのパワフルな美声に「すごい」「すごい」とどよめきが・・。それに加えて「女心の歌」でも、客席を周りながら歌われて、美声の直撃に会場は大いに沸きました。福井さんの地元ならではの大サービスに会場は大興奮状態。


 最後の全員で歌う「さとうきび畑」も客席に降りて歌ってくださり、福井さんの多くの知り合いの方も歌われたのでしょう、感動的でした。
「もう、息も絶え絶えなので終わります。」と福井さんが最後に挨拶されたときは、本当に息が上がった状態で、いつもすごいのに、それ以上に熱を帯びたリサイタルでした。
  近くに座っている方が、後半が始まる前は「外国の知らない曲ばかりでつまらないわ。」とつぶやいていたのに、最後に見たら、一番手を高くあげて拍手されていたのが印象的でした。遠かったけれど、それ以上に、来ることができて幸せだった本当に価値があるコンサートでした。(Y)