レビュー

レオンカヴァルロ 歌劇「道化師」(藤沢市民オペラ)

(2010年11月 6日 22:48)

2010年11月6日、13日  藤沢市民会館

藤沢市制施行70周年記念 藤沢市民オペラ  「カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師」

総監督:畑中 良輔   演 出:岩田 達宗    指 揮:清水 史広

道化師

カーニオ 福井敬 
ネッダ 塩田 美奈子 
トーニオ 牧野 正人 
ペッペ 大槻 孝志
シルヴィオ 与那城 敬 

藤沢市民オペラは、管弦楽、合唱が全て藤沢市民で演奏されるまさに市民オペラです。しかし、その歴史は長く、1973年からおよそ2,3年ごとに開催され、今回が21回目、そして、今年は藤沢市制施行70周年記念演奏会と、特に気合の入った演奏でした。これだけのキャリアのあるプロダクションなので、市民といえども、オケも合唱もレベルが高く、親子代々、兄弟姉妹で参加という方もいらっしゃるそうです。

福井さんは、地元という事もあり、デビュー当時から出演され、1992年の魔笛から、リエンツィ、トゥーランドット、ボエームなど、ほとんどの主要な演目で演じられています。

今回は、待望の「道化師」。今までは、演奏会形式や、「衣装をつけろ」のアリアだけと言う形では聞いたことがありましたが、本格的なオペラでの上演は初めてでした。去年のオテロから、歌の表現、舞台での演技がますます円熟味を増し、福井さんご本人も「ようやくこのオペラをやれる年代になってきたと思います。」と語られていたように、今回の「道化師」は想像を絶する凄い舞台でした。見たもの誰もがその世界に引き込まれ、共感し、感動したのではないでしょうか。

特に福井さんのカニオは凄かった。「衣装をつけろ」はいままで聞いたアリアの中でも最高でした。あんな短いアリアなのにそこにカニオの人生が凝縮され、その葛藤、つらさが切々と伝わってきます。久しぶりにアリアを聴きながら涙を流し、周りが何も見えなくなってしまいました。

実は、アマチュアのオペラだということで、福井さんのアリア以外はそれほど期待せずに行ったのですが、アマチュアだということを引き算しても、音楽がとても充実していました。合唱も皆さんの演技もほほえましく、悲惨なドラマの緊張を程よく和らげて下さいました。でも、やはり福井さんのカニオはじめ、、トニオの牧野さん、ネッダの塩田さんが素晴しく、こんなに役者の揃ったオペラにはめったに出会えなかっただろうと思いました。

「道化師」になった福井さんと、このオペラを見た方からの感想です。ありがとうございました

「衣装をつけろ」をコンサートで聴く度にぜひ、オペラで聴きたいという願いがやっとかないました。想像以上に凄まじく哀しい歌と演技でした。DVDで「道化師」のオペラを観る時は、いつもネッダに共感して、カニオに対しては嫌悪感でいっぱいでしたが、やっぱり今回は福井さんのカニオの味方です。最後の劇中劇では、カニオに対する恐怖を感じながらも、カニオに共感してネッダの仕草や一言一言に一緒に傷つき、哀しく、辛い、苦しい感情がないまぜになって、ネッダが刺された場面では、舞台上の観客役と一緒に悲鳴をあげながら逃げたくなりました。
 ところで、オペラ冒頭部分での福井さんのテンションの高い道化師ぶりがとてもはまっていて、楽しく、もっと観たいと思いました。オペラでそんな役はないでしょうか?(Y
                                                
                                                 
                                                                    
「道化師」は、三大テノールの十八番の曲で、「衣裳をつけろ」が有名です。だから福井さんがどんな「衣裳をつけろ」を歌ってくださるのか、それを聞けるかとても楽しみで伺いました。期待を裏切らないすばらしい舞台にただただ感動してしまいました。正直、冒頭のパリアッチョ姿の福井さんを見たとき、くすっと笑ってしまったのですが、次の第一声を聞いた瞬間あっという間に現実から舞台の「道化師」の世界に引き込まれ、あれよあれよという間に、嫉妬に狂うカニオのド迫力に圧倒されて心の中で「福井さん怖いよう~」なんて怖がっているうちに幕となってしまいました。声だけでなく、演技もすばらしいですね。次はトゥリッドゥを聞きたいですね。(M)