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2012年 トスカ 感想(Yさん)

(2012年8月 5日 14:31)

一幕目の「妙なる調和」からトスカへの愛の歌を福井さんの春風のような美声でえんえんと聴くことができてうっとりしました。いつもだったら逃亡者がいるのにと焦りながら聴いている歌も、永遠に続いて欲しいと思いました。(このうっとりはオペラが終わった後から今まで1週間も続いています。)

  でも、なんといっても最高だったのは、二幕目のスカルピアの前に連れてこられたカヴァラドッシがナポレオン勝利の報告を聴いて、「勝利だ」と歌う場面。会場全体に力強い声が轟き鼓膜がびりびりしました。この一声で心も体も伸び伸びと解放されてスカッとしました。単なるスカルピアへの面当てではなく、カヴァラドッシは政治的活動に本腰を入れていたのですね。このまま、スカルピア対カヴァラドッシの政治的闘いのドラマが続いたら面白いだろうなとかなわぬ期待をしてしまいました。

 

いつも福井敬さんの「星は光りぬ」をコンサートで聴くと、あまりのリアルさに辛くて、自分が数時間後に殺される立場だったらどうしようと心の中で右往左往して歌を聴くどころではなくなっていました。今回のオペラの中では看守にトスカへの手紙を渡すことをお願いする場面から「星は光りぬ」まで特別なアリアが入ったというよりは、すんなりとドラマの一部として聴くことができたので、あまりの印象の違いに驚きました。トスカへの想いが凝縮されていて素晴らしい場面でした。これからは、この歌を聴くたびに、せつないドラマを思い出しそうです。(Y)