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詩人の恋 日本語訳 (15~16) 過ぎ去りし青春の日々

(2012年9月 1日 17:14)

15.「古いおとぎ話の中から」

古いおとぎ話の中から、
白い手が招く。
その魔法の国から、
歌声が聞こえ、曲が奏でられている。

たそがれの黄金の光の中で、
色とりどりの花々が咲き乱れる場所で、
まるで花嫁のあでやかな顔のように、
花々は美しく、かぐわしい。

そして緑の木々たちは、
いにしえのメロディを奏でる。
風は密やかにそよぎ、
鳥たちはさえずる。

そして雲がもくもくと大地から立ち昇り、
風がヒューヒューいう奇妙なコーラスとともに踊る。

そしてすべての葉や小枝の上で、
青い火花が飛び交い、
赤い光が、
狂った混沌の中を走り回る。

そして、天然の大理石の割れ目から、
音を立てて泉があふれ出し、
奇妙な様子で小川へ流れ込むと、
キラキラと煌きながら流れてゆく。

おお、私は魔法の国へ行くことができるだろうか?
そして心からの喜びを味わうことができるだろうか?
魔法の国へ行くことができれば、
すべての苦痛が取り除かれ、
自由で聖なる心地になれるのに!


おお、その国こそが至福の地!
私は幾度も幾度も夢で見た。
でも、朝になって太陽が昇ると、
それはただの泡のように消えてしまう。


16.「古きいまわしき歌」

古きいまわしき歌、
いまわしく、邪悪な夢を、
大きな棺(ひつぎ)を手に入れて、
たった今、葬り去ろう。

さあ入れよう。棺に入れるものはたくさんある。
でもそれが何かは言わないでおこう。
その棺は、ハイデルベルクの酒樽より、
大きくないといけない。

そして棺台にする、
丈夫で分厚い板でできたやつを持って来なければ。
そしてそれは、マインツの橋の橋板よりも、
長くなければならない。

そして私に12人の大男を寄こしてほしい。
ラインのほとり、ケルンの大聖堂の、
力持ちのクリストフよりも、
力持ちでなければならない。

彼らは棺を担いで行って、
海に沈めなければならない。
そんな大きな棺には、
大きなお墓がお似合いだからね。

その棺が、どうしてそんなに
大きくて重いか、わかるかね?
私は私の愛と苦しみを、
一緒にその中に入れて沈めてしまいたいのです。

クリストフ 
少年の姿をしたキリストを担いでライン河を渡った大男の話しに出てくる、大男クリストフォロスのこと。
少年に無理にせがまれ、大男は少年を肩に乗せ、増水するライン河を渡りはじめましたが、最初は軽かった少年が徐々に重たくなり、やっとのことで向こう岸へ少年を渡した大男は、そこで息絶えてしまいました。少年は大男に祝福を与え、十字架を背負ってその場を去りました。それ以来大男はキリストを渡した人と言う事で、クリストフォロスとして聖人に名を連ねています。このキリスト教とゲルマン神話の混じった話はライン河に沿ってあちこちに絵や像が残っており、ケルンの大聖堂にもあります。

 

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