レポート・感想

久々の生オペラ!「フィデリオ」の感想

2020/09/06

公演: ベートーヴェン:オペラ「フィデリオ」

本当に久しぶりのオペラ 福井さんの生の声!フロレスタンの嘆き! 魂を鷲掴みにされてぐいぐい揺さぶられました。 涙がこみあげてくる。

コロナ禍でも楽しく暮らしているつもりだったけれど 本当はフロレスタンのように暗闇の獄中につながれていて 今、やっと光が差すところに来た!と実感しました。 まさにオペラの中の「神はここに」と同じ心持ち。

心と体が覚醒したせいか、オーケストラの音楽も 一段とドラマチックに聴こえてきて、怒涛のフィナーレを 主人公と同じになって喜びと感謝と希望に満ちて迎えました。 コーラスの方々が距離を保って立ち、全員マスク着用 歌う直前にさっと取る演出には笑ってしまいました。

中止にすることなく、多大な労力で公演を開催してくださった みなさま本当にありがとうございました。(YY)


願いがすべてかなったリサイタル

2019/12/01

公演: 福井敬スペシャルリサイタル2019 in東京

福井さんが本を取り出して、「『永訣の朝』宮沢賢治」とおっしゃった時、びっくりして飛び上がりそうでした。何回かリクエストをしていた詩。まさか、叶えてくださるとは!しかもネイティブ岩手弁。とし子の「あめゆじゅ とてちて けんじゃ」や他の岩手弁が一体どんなイントネーションなのかがずっと疑問で、その箇所だけいつも引っかかっていたのですが、やっと納得してスムーズに聞くことができました。会場は、一瞬にして雪原が広がり、福井さんの手にかかると詩というよりは映画のワンシーンのようです。最後の「わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ」福井さんのすべての歌に通底していると思いました。

 今回のリサイタルは、口に出したり出さなかったりした私の願いがすべて叶えられました。外国の歌曲が聴きたい、二重奏ばかりのリサイタルをやって欲しい、三大テノールの派手な衣装を見たいという願いに加えて、福井さんが大嫌いになってしまうぐらいの悪人の役を見てみたいという願いも、カヴァレリアで実現してしまいました。

トゥリッドゥ、見事に最低の夫でした。心の中で「わあ、ひどい!」を連発。若くてかわいい高橋広奈さんをもの欲しげに見ている姿もすごく嫌。清水華澄さん演じるサントゥッツアに心から同情しました。それでいて、あんなに醜い修羅場なのにこんなに音楽が美しいのは、奇跡です。

望み通り大嫌いになったのも束の間、次はオペラの中で一番好きな「アイーダ」の二重唱。全世界の中で、福井さんのラダメスは男気があって一番かっこいい。すぐに大ファンに戻ってしまいました。ホセ、アルフレード、トゥリッドゥ、ラダメスと全然違うタイプの役を演じ分けられて歌えるのも福井さんならでは。本当に素晴らしい体験でした。

他にも、6月の大阪公演の時は、まだ弱々しかった高橋広奈さんが、別人のように堂々と大曲を歌い上げていて驚いたこと。「旅立ちの日に」客席に座って歌われた合唱が後ろからじわじわ包み込んできて、今まで経験したことのない感動を得たこと。色々な種類の感動がありすぎてはちきれそうでした。

福井さんの素晴らしさは、出し惜しみしないことです。私は、欲が深いのでまだまだリクエストが多数あって瀧廉太郎特集や木下牧子特集やミュージカルも沖縄民謡も聴きたいです。それまでスペシャルリサイタルが長く長く続きますように。(YY)


福井さんの十八番ばかりの王道コンサート

2019/09/09

公演: 福井敬テノール・リサイタル(埼玉県)

福井さんの十八番ばかりの王道コンサート。 9月とはいえ真夏のような蒸し暑さの越谷でしたが、空調のきいたホールの椅子にゆったり座って福井さんの歌いこんできた日本歌曲を素晴らしい技巧でもって聞かせていただく、贅沢な時間でした。

今日の演奏は、いつもよりテンポを落としたり、デュナーミクを強調したり、そしてまっすぐ飛んでくる矢のような歌声の力強さを感じました。宵待草の染み入るような風情が特に素敵でした。

宮沢賢治の

雨ニモマケズの朗読から続けての[死んだ男の残したものは]の熱唱は、ピーンと張りつめた緊張感と平和を願う心からの熱い思いを、いつもながら全く見事に表現されて一幕のお芝居を見ているようです。

<歌曲はオペラのように、オペラは歌曲のように> ずーっと厳しく、怖い顔で歌ってきて最後に少し、優しい笑顔を見せてくれ、みんなホッとするのと同時に改めて反戦を思うところも、素晴らしい弁士は絶妙です。

休憩時間に「この曲はいい歌だから歌いたがる人は多いけど、福井さんほどの説得力をもった素晴らしい歌い手はいない」という声を聞いて嬉しかったです。

後半は後ろのドアから現れて、客席を廻りながらの[学生王子のセレナーデ] 拍手と歓声、握手を求める手が伸び、ヒューヒュー!ピーピー!とクラシックのコンサートとは思えないくらいの盛り上がり。(御自身で純烈です(笑)とおっしゃってました) 続くビーマイラブと会場中をピンクの薔薇の花びらが舞う甘ーい空気でいっぱいにしてくれました。この演出、大好き!

写真左は、構成とお話の岡部真一郎さん。 休憩時間に客席から集めた質問を福井さんにインタビューしてくれました。 岡部「福井さんが一番幸せを感じるときは?」 福井「舞台に立ってお客様からの笑いや拍手、反応をいただける時、、、今です!」 岡部「オペラの登場人物で一番好きな女性は?」 福井「カルメンやマッダレーナ 男ゴコロを鷲づかみするような魅力的な女性に憧れます」 等々、インタビューでお人柄を垣間見ることができて楽しかったです。

Collina


大阪公演感想ーMr A.T.さんのブログより転載

2019/07/17

公演: 福井敬スペシャルリサイタル2019 in大阪

今回は日本を代表するメゾ・ソプラノ清水華澄さんと若手ソプラノ高橋宏奈さんを呼んで、 前半にリート、後半にカルメン抜粋という贅沢なプログラム。 幸運にも、最前列かぶりつきの席で聴かせていただいた。

前半リートでの福井さんの細やかな息づかいと技巧の何たるすばらしさ。 特に日本語の歌を聴くと、言葉の一つひとつをいかに丁寧に扱っているかがはっきりと感じ取れる。 寺山修司の〝悲しくなったときは”を、二人の作曲家がそれぞれ歌にしたものを福井敬さんと 清水華澄さんとで続けて歌うという、凝った選曲もすばらしい。

第2部カルメン抜粋では、福井敬さんがデュトワ・大阪フィル〝サロメ”でヘロデを歌っていた、 その同じ時間に東京での二期会〝サロメ”で清水華澄さんがヘロディアスを歌っていた、 その二人が目の前で歌い演じるカルメンとドン・ホセをわずか1メートルほどの至近で観るという、 これまたなんとも贅沢の極み。

日本を代表するテノールとカルメンがはまり役のメゾ・ソプラノなのだから、魅せられないわけがない。 それにしてもお二人とも何たる声量だこと。華麗なミカエラの高橋宏奈さんも加わり、 とにかく魅力満載のリサイタルだった。

終演後、福井敬さん、清水華澄さん、高橋宏奈さんも参加してのオフ会で、楽しいひと時を過ごした。

Mr A.T.


福井敬スペシャルリサイタル   2019年6月29日(土)ザ・フェニックスホール 視聴記

2019/07/15

公演: 福井敬スペシャルリサイタル2019 in大阪

コンサートは「歌曲」が入るので、また違う期待がある。 福井さんは、1996年『蝶々夫人』の初演版希少公演や、2000年代のびわ湖ホールヴェルディ日本初演作品シリーズの数々の大役、2010年代もさまざまな作品やヴァーグナーも歌われてこられた。先日の大阪国際フェスティバルの『サロメ』のヘロデ王でも、変わらない正確な歌唱と大きく響き渡る声が、まだ忘れられない。複雑且つ精緻な音楽が、奔流となって押し寄せるのが魅力のこの作品を、見事歌いこなされた。氏の高い次元の歌唱を注視して聴かせて貰った。

今年は溌溂とした名メゾ・ソプラノの清水華澄さんとジョイントコンサートとなった。プログラムは多彩で、R・シュトラウスと日本の歌曲で、8曲中6曲を福井さんが、2曲を清水さんというダブルで味わえる贅沢さだった。福井さんの“リート”についてのお話しのように、豊潤な言葉と音楽の凝縮芸術が感じられた。“リート”に限らず福井さんの子音母音の明瞭さも何十年と変わっていなかった。そしてお話しの丁寧さから福井さんの芸術への強い愛情と誠実さが伝わった。

第2部は、清水華澄さんと透明感ある美声の高橋広奈さんのミカエラが加わる『カルメン』ハイライトだ。名場面続きの中、「花の歌」の所にきた。METで活躍される名テノールでも、最後の高音は、聴く者のこちらまで固唾を飲んで、体が膠着するかのようになる。この時の福井さんは自然にすんなり高音を出されてしまわれた。ラストの2重唱は、切迫したクライマックスシーンを感じさせて下さり、さすがの長年の実力と貫禄に満足した。

ここまででも十分だったが、最後のアンコールの「落葉松」は、特に見事だった。日本歌曲の詩から伝えたい気品と人々の佇まいと風景が飛んできた。

歌手さんは、ここまでの域を極める音楽家・芸術家であると、敬意の念を新たに積み重ねた。

(奈良 M・S)


次回東京公演でのもう一つの聴きどころ

2019/07/06

公演: 福井敬スペシャルリサイタル2019 in大阪

次の福井敬スペシャルリサイタル東京公演も、福井敬さんと清水華澄さん日本のトップ歌手の最高レベルの二重唱は絶対感動間違いなし。その上聴きどころがもう一つ。みなさまは、福井さんの教えた生徒さんの歌を聴いてみたいと思いませんか?高橋広奈さんは実は、福井さんの生徒さんで6,7年前には福井ネットの学生お手伝いの一人だったそうです。

福井敬ネットのリサイタルの時に福井さんの生徒さんも毎年何人かお手伝いに来ていただいています。チラシ挟み込みや入場口でのご案内をしながら、リサイタルの裏の段取りを勉強されています。全員気配りができて、サービス精神旺盛で、いつの日か、この中から歌手として羽ばたく人もいるのだろうなと思っていたら、もう出てきた!しかも、若くして福井さんと清水さんと同じ舞台なんて、すごいシンデレラストーリー!!福井さんは、「たまたま才能のある子が私のところに来たのですよ。」とおっしゃっていましたが、福井先生が教えた人が、つまらない歌を歌うわけないだろうなと思っていたら、やっぱりオペラの世界にぐいと引き込んでくれる歌でした。そんな訳で、福井ネット育ちの新進歌手に乞うご期待です!!


大阪公演 感想です

2019/07/06

公演: 福井敬スペシャルリサイタル2019 in大阪

日本トップの実力派歌手福井敬さんと清水華澄さんが揃うと、シュトラウスも日本歌曲も琴線に触れすぎて、ずっと涙目で聴くことになった。

カルメンハイライトは、谷池さんのピアノ1台ですっかりオペラの世界。 高橋広奈さんのミカエラは、若くて清純なリアルミカエラ。春風のように心地良い声。あまりに可愛らしいので、オペラの中でさえ辛い目にあって欲しくないなあとなぜか、すっかり保護者気分で応援。

華澄さんのカルメンは、太陽のように明るくて、伸び伸びしていて、チャーミング。ハバネラで客席を回った時も、ホセを誘惑して縄をといてもらう時も、どこかユーモラスで楽しい。

対する福井さんのホセは、絶妙なダサさ加減。今までのホセの中で一番好きです。歌は素敵だけど、体裁もなにもかも捨てて必死さが募るほどみっともなくて、ホセがみっともないほど、死を賭してのカルメンの拒絶シーンが格好いい。今回は心の底から、スッキリしました。

ホセとカルメンの目の前の迫力のある演技に会場はキューッと縮むように集中して、1曲終わるごとにバーンと弾けて喝采の嵐。息つく暇もない展開にあっという間に終わってしまい、1時間が10分ぐらいに感じました。

アンコールは福井さん「騒がしかったでしょう。」と「落葉松」。今まで、犯罪者だった人が人徳者に変身する瞬間。最後に出演者全員でのお笑い「乾杯の歌」。清水華澄さんて根っからのコメディエンヌだー。歌の取り合いに大笑い。ああ、面白かった。(YY)

G20で街中警戒態勢で、少し滅入っていたのですが、とても楽しいリサイタルでした。 特に、第2部では、ピアノ演奏だけでエスカミーリョの存在を感じさせたのは、 面白い(効率的?)アレンジだと思いました。 又、アンコールでのカルメンとミカエラのバトルも愉快でした。 福井さんの歌唱は情熱的であり、温かみも感じられて、心が安らぎます。 来年のリサイタルも楽しみにしております。(Mさん)


二期会DAYS フィガロの結婚 ダイジェスト

2019/06/27

公演: 奇跡の“驚”演!!『フィガロの結婚』ダイジェスト版

福井さん登場の瞬間、きゃーっ、わ~、すごい拍手。今日の客席は若い女性が多くてノリがいい。バジリオもドン.クルツィオもどんな役だったか、記憶になかったけれど福井さんがやられるなら、(しかも初役)きっと、と思ったけど、こんなに面白いなんて!いつもシリアスでかっこいいヒーロー役の福井さんが、こんなに三枚目がお上手なんて!もう、びっくりの連続。 ビヨーンとなったり、バシッとされたり、ドヒャーもヒョーイも、爆笑で盛り上がった。もっと見たいな、笑わせてくれる福井さんも。 期待通りの楽しい舞台だった。 (Collina)


大航海時代の音楽を旅して

2019/06/16

公演: 福井敬×アントネッロ スペシャルリサイタル第2弾 海を渡るINISHIEの楽~大航海時代の音楽~

大航海時代にタイムトラベルして、潮風をあびながら、航海をしているようでした。子守唄、シャンソン、ルネサンス・スペイン歌曲、舞踏曲、次から次へと初めての風景が広がり、珍しいものがたくさん。初めて聴くけれどなぜか懐かしい、外国の歌なのに日本の歌にそっくりとワクワクしっ放し。

その中でも、本当に体がシビれました!日本民謡の「日向木挽歌」の福井さんの朗々とした歌声に。古臭いイメージしかなかったのに、日本民謡ってこんなにかっこ良いものだったなんて。ルネサンス音楽も良いけれど、福井さんとアントネッロの洗練された日本の民謡も、もっと聴いてみたいです。

 後半、隠れキリシタンが歌ったオラショを元曲のグレゴリオ聖歌と聴けたのは、面白い。同じ歌なのに、最後は日本の歌にしか思えない不思議。濱田芳通さんの超絶技巧のリコーダー「英国のナイチンゲール」を生で聴ける贅沢さ。色々な国の人が登場する「船上の宴会」で自分が宴会に参加しているみたいに、すっかり盛り上がり、最後の最後でびっくり南米音楽。雰囲気がガラリと変わって、パプリカスパイスが香っているような濃厚な音楽。あまりに板についた演奏で本当はみなさま裏で違う名前で、ポンチョを着て南米音楽を演奏されているのではないかと疑ったほど。

 アンコールは「ロミオとジュリエット」でロマンチックに締めくくられました。最初から最後まで、実際の旅行よりも何百倍の大興奮の旅でした。ありがとうございました。テレビの放映も楽しみです。(YY)


「福井敬×アントネッロスペシャルリサイタル」の予習お薦めCD情報

2019/05/25

公演: 福井敬×アントネッロ スペシャルリサイタル第2弾 海を渡るINISHIEの楽~大航海時代の音楽~

「福井敬×アントネッロスペシャルリサイタル」の予習に

アントネッロの「天正遣欧使節の音楽」のCDを聴いてみました。

すっごく面白い!!

知っているようで知らなくて、懐かしくて新しくて

えっ、どういう音楽なんだろう!?

好奇心にかられながら体全体が耳になってしまう。

ヨーロッパに赴いた天正遣欧使節の少年4人が聴いたであろう

音楽をアントネッロの濱田芳通さんがプロデュースしたCDです。

この時代の様々な音楽が日本の子守唄やら、西洋のダンス音楽やら

宮廷音楽やら宗教音楽、民衆の流行歌がぎっしり詰め込まれて

飽きることなく聞き惚れてしまいます。

全ての音楽が天正遣欧使節の物語のために作られたものではないのに、

映画のサントラ盤のように場面場面の感情や状況がぴたりと合って

表現されていて、この選択はすごいなあと思いました。

6月1日はこのCDに収録されている音楽も演奏されるようですし、

もっとその世界から広がりがあるようで、どんな演奏会になるのか

今から気持ちが高揚しています。

演奏会に行く方は絶対!行かれない方にもお薦めです。(YY)

CD情報 

https://www.anthonello.com/discography/(古楽アンサンブルAnthonello)


(1-10/85)