今回、私が一番感動したのは、
村上裕昭さん作曲の 「Ave Maria“Moderato Cantabile”」です。
福井さんの声に合わせて作曲されたという歌はさすがです。
福井さんの特に美しい声を存分に聴けた上に、凛々しい声も存分に聴けました。
オペラ以外で凛々しい声を聴くことができる歌はあまりないので、
まさかの宗教曲で聴くことができて本当に嬉しかったです。
目の前で奇跡が起きているみたいに、
天から光がキラキラ差し込んでくるような音楽。
心の中がぱあっと輝いて、体の中の感動があふれ過ぎて、
涙がこみ上げてきました。
前半で福井さんが歌われた「歌をください」の歌詞の通りの
希望の歌であり、平和の歌であり、実りの歌でした。
ぜひ、今回だけではなく、また聴かせていただきたいです。
今年は、スペシャルリサイタル10周年だそうで、
毎年毎年、様々な美の世界を様々な歌で聴かせていただいて、
驚かされて、違った感動を得られるというのは
すごいことなのではないでしょうか。
10年も続けて素晴らしいリサイタルに通えたことは、私の一生の宝です。
ぜひ、この先、15年、20年と続けていただけるように切に願います。
(YY)
バッティストーニ指揮 ヴェルディ:歌劇「アイーダ」西宮芸文 2018-10-24 夜
熱血漢バッティストーニの指揮による引き締まったテンポが大きな魅力であり、特徴であった。 しかし、ピットの東フィルはいつもの美音ではなく、荒れ気味の響きであったのが惜しまれる。 それと日本人歌手の健闘である。装置や衣装は簡素ながらも、観客の夢を壊さぬものであった。
歌手ではアムネリス:清水華澄が終始声が安定し、演技も熟達していた。第4幕での一人で苦悩を演じる場面は圧巻であった。第2幕でアイーダとの確執が火花を飛ぶようにならなかったのはアイーダ:ザネッティンの力不足もある。彼女は声は綺麗だし、ルックスも良いが、声が細めではじめはドラマ性が不足と感じた。とは言え、徐々に燃えて?第3幕、第4幕では見事に歌った。 ラダメス:福井敬は第1幕冒頭から大声量で歌い出しファンを喜ばせた。かつての固く力んだ声ではなく、柔らかさもありイタオペのテナーらしい声であった。「清きアイーダ」は力が入って、やや傷もあった?以降は大ベテランならではの余裕、貫録があったのはサスガ!と感じ入った。
バッティストーニ指揮の常に引き締まった速いテンポは壮大、華麗さを備えつつ説得力があって心地よく音楽とドラマの進行に身をゆだねることが出来た。その総合的な快感!は忘れがたい。 その早いテンポで不満の箇所も幾つかはあった。例えば、天国に向かう第4幕後半は丁寧にやってこそ美しさが際立つというのに。しかし「凱旋の場」では装置は簡素だが、高揚する合唱と華やかなバレーが大きな装置となっていたが、そこでのドラマが盛り上がったのも此のテンポがあったればこそである。緻密で雄弁な合唱は優れもの。東京シティ・バレーのダンサー達も練達揃いで見事。
今回4階の中央、C席7000円で観たが、視覚的にも音響的にも申し分なし。
日中は陽炎が立つほどの猛暑のなか薪能に行って来ました。
日比谷公園の5倍の広さを誇る、都立小金井公園の中で毎年上演されて今年で40年の節目の年ということで、豪華な顔ぶれで能、狂言、舞、創作ダンスを楽しみました。
すっかり暗くなり、火がゆらめき、笙や篳篥の奏でる音を聞いていると、いったいここは何処なのか?時代を超越していくような、不思議な浮遊感が漂いました。福井さんの歌は、和楽器とだと音程をとるのが難しそうでしたが、なんとも立派で朗々と響く、雰囲気のあるものでした。
びっくりしたのが、福井さんのダンスのお上手なこと!腰の落とし方、足の運びのスムーズなこと!ダンサーに混じっても全く違和感がないどころか、こちらが本職?というくらいに素晴らしい存在感でした。
真っ暗な闇に浮かび上がる旧光華殿をバックに幻想的な舞台でした。さらに、空には大きな入道雲と稲光りが、この世のものとも思えない神秘的で鬼気迫る自然の演出を得て、神がかった、ちょっぴり怖い不思議な世界でした。
素晴らしい体験でした。 Collina
音楽評論家 加藤 浩子さんと福井敬さんとの
対談形式での「アイーダ」講座。
福井さん登場するなり、「清きアイーダ」の熱唱。
生の声がババンと体に当たり、ラダメスがどんなに勇猛な司令官だったのか
身を持って理解させられました。
夏の昼下がり。眠くなったらどうしようというのは杞憂でした。さすが、オペラのスターとして最前線で長年活躍され、ヴェルディ作品26作品のうち13作品歌われている方ならではのお話ばかり。加えて大学教授としての流暢な語り。ヴェルディ以前のオペラと以後のオペラとの違い、よりドラマティックに歌うためのブレスの違い等、笑いを交えての興味深いお話が盛りだくさん。途中、加藤浩子先生の海外での「アイーダ」びっくり演出のお話(冒頭、ラダメスとアムネリスがキスをしていただとか、ラダメスとアムネリスが夫婦の設定だった等)も面白く、身を乗り出して聞いていました。
最後の質問コーナー。オペラの歌詞にも出てこないことを聞いていいのかなと思いはしたのですが、質問させていただきました。「ラダメスは、アイーダのせいで地位も名誉も命も失ったのですが、アイーダを責めることもなく、そこが男気があるところですが、責める気持ちはなかったのでしょうか。」
福井さんはきちんと答えてくださいました。
「戦いの場面はヴェルディのオペラにあまり出てこない。戦いは外でやって帰ってきましたという場面から始まる。ラダメスのアイーダに対する愛は、個人的なことだけど、そのために自分の手で大勢の人間を殺さざるをえなかった。国のために人を殺して賞賛されている状況。ラダメスは本来は弾劾されるべき人間が、賞賛されているとわかっている。自分の愛を貫くために選択してとった結果だから、ラダメスはまったくアイーダに怒りを感じない。彼は誰も責めない。アムネリスも責めない。アムネリスは自分を愛してくれているだけだから、それはなにも悪いことではない。彼女は、アイーダのことを貶めようとはしていないし、敵国の捕虜である女王を保護してきちんとした地位に置いている。素敵な女性なのに、そこに恋愛感情が入って、見境がなくなっている。彼女はその状況を自分でわかっていて最後、2人のために祈りを捧げている。ヴェルディも考えてそこを書いている。それが素晴らしい。」(会場から拍手)
アムネリスのことを素敵な女性とおっしゃっている時点で、目の前で、本物のラダメスが日本語でお話されているようで、軽い興奮を覚えました。福井さんは演技されているとか、なりきっているわけではなくて、ラダメスその人でした。超人的なオーラも半端なかったです。(YY)
自分の席に座る時に、、ヴィオラ・ダ・ガンバ側だったとわかり狙ったわけではないけれど、席の選択が正しかったことを悟った。
福井さんの明るい声の後に、石川さんのヴィオラ・ダ・ガンバの低音が良く聴こえてゾクゾクする。そうこうしているとチェンバロやリコーダーの音がキラキラ聴こえてくる。
歌とそれぞれの楽器の音を聴くたびに、いちいち「うわっ!」と驚く。
初めて、美しい音楽を聴いた時のように、心の中では大騒ぎを繰り返す。
すっきりと空っぽの体に、瑞々しい音色が満たされていく。
陽気で、楽しくて、切ない。切ないと言葉で書けば、一語なのに、
音楽で表現されると何十通りの切ないが表現される。
そして、体のあちらこちらに染みていく。
第一部が終了した時に、もうすっかり気持ちが高揚して、
大満足だった。
そして、第二部があるなんて、なんて贅沢なことなんだろう。
1曲目の日本歌曲は「六騎」これも、切ない歌。
日本版の切なさには、粋な心も入っていて、かっこいい。
「秋桜」「春なのに」福井さんの歌謡曲は、日常生活の記憶に真っ直ぐ
語りかけてきて心を揺さぶる。会場中にすすり泣きの声。
一転して、チマーラの「海のストロネッロ」
どこまでも深く海の青のグラデーションが続く絵画を見ているような
壮大な芸術作品。
実は、オペラアリア前のトークの時間に
ドンと縦揺れがあり、ちょっと不安になったのですが
大した地震ではなくて、演奏は続行。
お待ちかねのオペラアリア
「清きアイーダ」勇壮だけど透明感溢れる初々しい恋の歌に
のぼせてしまう。
「道化師」の激情!
声量があまりに凄くて鼓膜も体もビリビリする。
天変地異はホール内にあり。すっかり、地震のことを忘れてしまった。
アンコールは、「落葉松」、「誰も寝てはならぬ」
福井敬さんの七変化を存分に堪能させていただいて
感動も七変化でした。ありがとうございました。(YY)
前半、「今日は、大人の方のためのプログラム」です。
と福井さんが仰るとおりに、なかなかの渋い歌セレクト。
でも、私にしてみれば、「六騎」「松島音頭」「お六娘」は
高松神社仏閣ツアーの最終を飾っていただくのに
ふさわしい歌ばかり。
良かった!頑張って金比羅さんや八栗寺にお参りして。
見てきた風景を今度は耳で聴くことができて、今回の旅行は完璧。
そして、後半の「学生王子」のセレナーデ
最近、聴く機会がなく、また歌っていただく機会があるのだろうかと
不安になってきたところ。やっぱり、この歌の威力は凄い!
華やかで、ロマンチックで、うっとりするってこの歌のためにある
単語ではないかと思うぐらい。この1曲を聴くために、飛行機で来ても良いぐらい。
この歌を聴くと体の中がピンクに輝いてしまうのです。
もちろん、この後もゴージャスな歌ばかり。
前半がわびさびのきいた粋な日本建築だとすれば
後半は壮麗な宮殿に足を踏み入れた感じです。
すっかり、贅沢させていただきました。
ありがとうございました。(YY)
宮崎での「蝶々夫人」を聴いてきました。宮崎空港に降り立つと突然の土砂降りと雷のお出迎えに(今日の福井さんは絶好調!) と確信しました。
昨年の椿姫で圧巻の歌唱を披露した中村恵理さんのタイトルロールに高まる期待と、初めて聞く福井さんの憎まれ役、ピンカートン像に ドキドキ・・・。
中村恵理さんは、登場から期待通りのすばらしさでした。袖から歌声だけが聞こえるのですが、その美しいこと! そして、花嫁衣裳を思わせる真っ白い着物を使ったドレス姿で客席に現れたお姿に目が吸い寄せられます。
福井さんのファンとしては、この時に蝶々夫人に向けられた舞台上の福井ピンカートンの喜びに輝く素晴らしい笑顔を 中村さんの背中越しに拝めて、キャ~!!でした。
一幕最大の聞かせどころ、愛の二重唱。甘~い、といより生命力の塊のような二人の声のパワーは驚異的でした。
中村さんの蝶々さんは、運命に翻弄された儚くか弱い女などではなく、しっかりと信念を持ち、理性的で、誇り高い侍の娘に見えました。 福井さんのオーケストラを圧倒し、情熱的でパワー全開の歌声が素晴らしかったです。
私が一番いいなあと思ったのは、3幕のピンカートンとスズキとシャープレスとの三重唱です。僕は間違っていた、僕は逃げる、 僕は卑怯者だ、と歌う姿には、ジ~ンときてしまいます。過ちに気づいて悔いる姿と、真摯な歌唱が心を打ちます。 こういうシーンが福井さんは本当にお得意ですね。
山下牧子さんの優しくて温かで素敵なお声と、本物のスズキか?と思うような表情にくぎ付けです。私たち観客は、この物語をスズキの気持ちで聴いているので、山下さんのような方に歌って頂けて、本当に幸せです。
素晴らしい公演を聴いた後は、友人たちと宮崎自慢の美味しい郷土料理とイモ焼酎で乾杯!しました。
(Collina)
八ヶ岳はまだ早春。林の中の遊歩道を歩いて、自然を満喫しながら着いた音楽堂は木のぬくもり。
ステージの後ろはガラス張りになっていて、左に大木、真ん中に富士山、右に林が見えて、
まるで野外ステージみたい。そこで始まったアントネッロの演奏を聴いて、音楽って今、
林の中で見て、聞いてきた自然を凝縮したものなんだなあと思いました。
福井さんが加わると背景が揃いすぎている中での濃厚な物語が始まり、ひきずりこまれずには
いられない。
私の席から見ると、人間技とは思えない超絶技巧で演奏している濱田芳通さんのすぐ後ろに大木が
枝を伸ばしていて、まるで木の精霊が演奏しているかのようでとても素敵でした。
後半は、日が落ちて辺りが暗くなってきました。ライトに照らされた木の壁のホールは一層
居心地が良くなり、音楽とホールと私たち聴衆の親密さが増して一体になった気がしました。
ハープの細かい音色を聴けば、心の中の琴線も細かく震え、ヴィオラ・ダ・ガンバの音を聴けば、
違う琴線が刺激され、福井さんの歌を聴けば、ぐっと切なくなり、リコーダーの音が始まれば、
また違うところがかき乱され、心のあちらこちらが刺激され、ほぐされてエネルギーが満ち溢れて
きました。4人の演奏それぞれの感動とホールの素晴らしさ。すっかり元気になりました。
ありがとうございました。(YY)
「先週、ワーグナーが終わったばかりなので、体はボロボロです。」
とおっしゃったこととは裏腹に、福井さんは絶好調でした。
森麻季さんとの乾杯の歌の二重唱から始まって
福井さんの歌ばかり並べると
「オー・ソレ・ミオ」 「グラナダ」よく知っている歌だけど、福井さんが歌うとかっこいい!
「さとうきび畑」伴奏がいつもと違って山岸茂人さんだったので
全く違う歌に聴こえてびっくり。モノトーンの静かな世界に涙、涙。
後半はオペラアリア。
「清きアイーダ」 福井さんの声は、本当に強そうな戦士の声。
強い勇者が歌う恋の歌ってゾクゾクする。
10月のオペラ「アイーダ」に期待が高まりました。
客席を回ってくださっての「愛さずにはいられぬこの想い」
会場中に広がる情熱的な歌。高まる興奮!
もちろん圧巻の「誰も寝てはならぬ」
森麻季さんとのちょっとコミカルな演技入りの「リゴレット1幕の二重唱」
アンコールは「メリー・ウイドウ 唇は語らずとも」
大好きで、気持ちが高まる歌ばかり。二重唱も存分に聴くことができて
このコンサートの謳い文句「オペラ会に輝く2大スターを1度に聴く、究極の贅沢」に
偽りなし。素晴らしい午後でした。(YY)
オペラ歌手って素晴らしいなあ!! こんなにも、人に感動を与え、世界観を表現できるんだなあ~・・ 今まで10年間、福井さんの出演されるオペラを見続けてきましたが、今回はまた改めて、福井さんの理想とする芸術への燃えるような姿勢と練達の技を見せて頂いた思いです。
4時間の大作が、一瞬も退屈することなく、ワクワクしながら見ていて、あっという間でした。 まるで、ドイツの歌劇場で見ているようです。 日本でも、こんなすごい読み替え演出を見ることができるのだなあ。 演出家の深作健太さんの1月に行われたトークで、ローエングリンとバイエルン国王ルードヴィヒ2世の人生を 交錯させると聞いて、関係書籍を読み、ヴィスコンテイの映画も見て、オペラに臨みました・・が、一回目では まだよく理解できず、アフタートークでの解説を聞いて、のちのこの日の舞台。霧が晴れたようにクリアに理解できました。
福井さんの七変化。どれも素敵で、どんな衣装も着こなし、役になりきっていましたが、甲冑をつけた騎士姿が格好良かったです。賛否両論の(笑) ルイ14世の衣装姿も楽しみにしていましたが、とってもお似合いで、ダンスも可愛らしかったです。 神聖なキリスト教の伝説の騎士をかっこよく歌う、というよりも、壮年の一人の男の妄想や憧れ、理想などをとても人間らしく苦悶しながら歌う、この演出は福井さんにピタリと決まったなあ、と感動しました。 福井さんでないとできない表現の自在さ。 歌声は力強く、英雄的でもあり、耳も目も楽しめる出色の舞台でした。 まだ、耳の奥では音楽が鳴り続け、頭の中には三角形の白鳥が浮かんでいます。現実世界に戻れません。 (Collina)