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「椿姫」感想(1)

(2013年3月31日 10:12)

今回の演出は1960年代と現代に近く、猥雑な乱痴気ホームパーティーから始まりました。ヴィオレッタは高級クラブのママみたいで、スーツ姿のアルフレ-ドは中年サラリーマン風――演出が大人の夜の世界なので、大人の色気が濃厚で素敵でした。1幕の二重唱、クラクラしました。「花から花へ」に挿入されるアルフレードの歌はゆっくりで、長く聴いていられるのが嬉しくて嬉しくて。ここでヴィオレッタの想いは決定されたのだなあと思いました。

 一番印象的な場面が2幕最後のヴィオレッタと別れたアルフレードが、怒りまくってパーティーに乗り込むところ。岩手公演の「椿姫」の時も感動したけれど、今回は少し違う感情。福井さんの名演技!!アルフレードの一挙一動作に怒りと優しさと悲しさと愛が混じり合っていて、こんなにヴィオレッタのことが好きなのだなと、心が包み込まれるように、ほんわりと明るく温かくなりました。すっかりヴィオレッタに感情移入していたから、嫉妬してもらって嬉しかったのかも。特にもう一度二人でと、とろけるような誘いには私だったら絶対に抗えない!

 砂川涼子さんのヴィオレッタも迫真の歌と演技で、福井さんの情熱と美声に裏打ちされたアルフレードがいたからこそヴィオレッタの感情の動きにいちいち納得できました。ヴィオレッタの死ぬ場面で、アルフレードやジェルモンが駆けつけたのは、ヴィオレッタの想像だったという演出は最後の幸せな歌を無残にするから大反対!(Y)