プログラム解説
海を渡るINISHIEの楽 大航海時代の音楽
15〜17世紀の大航海時代、「音楽」も船酔いと戦いながらナウ船に乗って長い船旅をした。今日は中でもヨーロッパと日本の往来にスポットを当て、大航海時代の音楽を体験してみたいと思う。
我が国には、安土桃山、戦国時代などと呼ばれた時分に西洋音楽が訪れた。その主な担い手はキリスト教伝道を目的とした宣教師たちであったが、その先陣を務めたのがフランシスコ・ザビエルである。幕開けの器楽曲バルトロメオ・デ・セルマ作曲のカンツォン第3番に続いて、まずは彼の故郷であるスペイン、バスク地方の子守唄《ねむれ、ねむれ緑の丘に》をお聞き頂こう。ザビエルはその名も「ザビエル城」というお城を持つほどの高い身分の貴族の出、パリ大学に留学し、そこでイエズス会の創始者イグナツィオ・ロヨラと出会っている。《恋の手習い》はそんな時、彼がダンスホールなどで耳にしたであろうフランス・ルネサンスのシャンソンである。
続いて、我が国に渡来したであろうルネサンス・スペインの世俗歌曲の中から《ラ・トリコテア》 《ロドリゴ・マルチネス》の二曲をお届けしたい。これらの曲は趣が日本の童歌や民謡に似ており、南蛮由来の言葉や食べ物同様、関連性があるのではないかと思わせる。一方、続く《天主のサントスは来たりて》は日本で出版された『サカラメンタ提要』に含まれるキリスト教聖歌である。
この時期「天正遣欧使節」と呼ばれる、日本の若者がヨーロッパまで渡りローマ教皇に謁見するという偉業がなされた。彼らは西洋音楽にも精通しており、スペインのエヴォラでは大司教の前でオルガン演奏を披露したり、帰国後、秀吉の前で御前演奏を行なったりした。また、彼らは斜塔で有名なピサの宮廷の舞踏会に参加し西洋のダンスにも挑んでいる。器楽で奏される《花の舞》はその時に踊られた可能性の高い舞曲である。続く《日向木挽歌》は天正遣欧使節のメンバーで、近年肖像画が見つかった伊東マンショの故郷の民謡。彼は特に鍵盤楽器の演奏に長けていた。そして、プログラム前半は彼らがマントヴァを訪れた際、宮廷楽長を務めていたジョヴァンニ・ジャコモ・ガストルディの作品《楽しい人生》で締めくくろう。
後半のプログラムは再びバルトロメオ・デ・セルマの器楽曲、カンツォン第4番で始まる。この作曲家はドルツィアン(ファゴットの前身)奏者であり、アウグスチノ修道会士という宗教者としての一面も持っている。
さて、我が国のキリシタンは、キリスト教史において最も多い殉教者を出すという悲惨な運命を辿った。信者たちはその後、隠れキリシタンとして潜伏し信仰を守り続けると共に、キリスト教聖歌も隠れて歌い継いだ。それらを『オラショ』という。《おお、栄えある聖母マリアよ》と《ぐるりよざ》では元曲であるグレゴリオ聖歌と、伝承で伝えられるうちに変化したオラショを並べて聴いて頂く。 《ああ、美しい恋人よ》は哀しげなポルトガル民謡。宣教を始めとする数々の夢が破れ、日本の地に散ったポルトガル人たちの魂を思い選曲した。彼らは本国では生きられない改宗ユダヤ人だったかも知れないし一攫千金を夢見て、危険を顧みずジパングを目指したのかも知れない。数々の殉教は非常に酷いあってはならない出来事ではあるが、一方、もし彼らの思惑通り進んでいたら、現代我々日本人の顔は濃く「サンチェス」「ロドリゲス」などという名字を名乗っていたのではないか。どのような結末にせよ、歴史には「悲劇」がつきものである。その過去の悲劇から学び、再び繰り返されないよう反省する事も重要だが、先人の避けられなかった悲劇を「美しい悲劇」として伝えていくのも我々後世の人間の一つの務めではないかと思うのである。
さて、天正遣欧使節はナウ船に乗ってヨーロッパまで大航海したわけだが、船を使わずほとんどを徒歩でローマまで行ったペトロ岐部という人物をご存知であろうか。彼はエルサレムを経由してローマに着き司祭に叙階された。帰国後「沈黙」で有名なフェレイラ神父(沢野忠庵)を面と向かって批判している。天正遣欧使節の一人中浦ジュリアンが穴釣りの刑で殉教した傍、フェレイラ神父は中心的立場にありながら棄教してしまったからである。《簒奪者にして暴君》はローマ生まれのジョヴァンニ・フェリーチェ・サンチェスの作品、ここでの暴君とは恋人のことであるが、この時代を牛耳った様々な暴君と重ね合わせた。
日本に訪れた南蛮人はラテン民族に限らず、例えばオランダからも数多くやって来た。日本語にはオランダ語由来の言葉も多い。オランダは鎖国後も長崎の出島に出入りが許されており、鳥の啼き声を模倣し、リコーダーで奏される《英国のナイチンゲール》はその頃のオランダの曲である。
さて、プログラムも大詰めに差し掛かってきた。 《船上の宴会》では大航海ならず気楽な船旅が描かれる。船には色々な国籍の人々が乗り込み、お国柄を発揮して次々に歌うが、最後は猫が暴れて大騒ぎとなるといった内容だ。
プログラムの最後を飾るのは、日本とは逆方向にイベリア半島の文化が浸透した南米の音楽である。《我らが主の生誕に寄せて》はマチュピチュで有名なペルーには、『トルヒーヨ写本』というあらゆるものに言及した百科事典のような本が残されているが、その中に楽譜も含まれている。このような一聴すると駅前でアンデスの人達が演奏しているような曲が、バッハの時代と同じ頃の音楽であったことは驚きである。
文/濱田芳通(アントネッロ主宰)
1月15日(火)9時~ 先行予約受付開始
(受付前の申込みは翌日(1/16)以降の扱いとさせていただきます。)
♪ 福井敬×アントネッロ
6月1日(土) 14時開演 Hakuju Hall
券種、席ブロックを決め、第三希望までお選びください。
- 料金 -
◇ 一般 5,000円(定価 5,500円)
◇ ペア券 9,600円(2名様料金)
◇ オフ会 7,000円(出演者との食事付き親睦会、着席形式)
17時~19時 場所未定
お申し込み時に参加者名をお知らせください。
◇ チケット郵送料 無料
♪ 福井敬スペシャルリサイタルin大阪
6月29日(土) 14時開演 ザ・フェニックスホール
券種、席ブロックを決め、第三希望までお選びください。
- 料金 -
◇ 一般 5,000円(定価 5,500円)
◇ ペア券 9,600円(2名様料金)
◇ オフ会 7,000円(出演者との食事付き親睦会、着席形式)
17時~19時 場所未定
お申し込み時に参加者名をお知らせください。
◇ チケット郵送料 無料
◆ 申し込み方法 A
郵便局“払込取扱票”にて申込み&入金(郵便局払込日が申込日)
通信欄に申込み内容を記載
(既にお渡し済みの払込取扱票をご利用ください。)
◆ 申し込み方法 B
ホームページ「チケットお申込み欄」より申込み(送信日が申込日)
(既にお渡し済みの払込取扱票と同じ内容を入力してください。)
一週間以内に ゆうちょ銀行 又は 郵便局にて入金
※お手元に払込取扱票が無い方は、見本を参考のうえ、郵便局備え付けの用紙をご利用ください。
振込先(振込手数料はご負担ください。)
・ゆうちょ銀行 0一九支店 当座696086 フクイケイドットネット
・郵便局(払込取扱票) 口座番号00180-7-696086 福井敬.net
チケットお問合せ 090-1245-5305(松尾)
この度は、福井敬スペシャルリサイタル2018in東京に多数ご来場いただきありがとうございました。
前半の日本歌曲では3.11の震災時に作曲された「春なのに」や「死んだ男の残したものは」、後半もバッハのロ短調ミサ曲や、村上裕昭氏の「アヴェ・マリア」2曲など。人生を振り返るような曲を歌わせて頂き、皆様とコンサートを供にできる感謝の気持ちと代えさせて頂きました。
東京での公演はもう10年になりました。これも、会場に足を運んでくださる皆様がいらっしゃればこその事と、ありがたく感謝いたしております。また、今回は12名もの方がボランティアとして関わって下さいました。これも皆さま方による手作りでという福井ネットコンサートの素晴らしさで、心強い応援にお応えせねばと奮い立つ思いです。
来年は6月にハクジュホールで、福井敬×アントネッロ スペシャルリサイタル11月に王子ホールにて福井敬スペシャルリサイタルを開催いたします。
これからも益々皆様にご満足いただけるよう精進していく所存です。 これからも何卒よろしくお願い申し上げます。
福井敬
2018年11月17日(土) 14時開演 トッパンホール
11月12日現在 残席情報!
福井敬.net取扱い分の残席をお知らせします。
この後は、残席情報を参考のうえお申込みください。
〇=空席あり
△=残りわずか(5席以下)
✕=空席なし
・福井敬.net特別価格
一般 5,000円(定価5,500円)
ペア券 9,600円(福井敬.netのみ取扱い)
・ホール取扱いの残席につきましては直接お問い合わせください。
トッパンホールチケットセンター 03-5840-2222
(10時~18時 日祝・休 主催公演日は営業)
定価 5,500円
トッパンホールクラブ会員 5,000円
福井敬スペシャルリサイタルの東京公演において、本邦初演のアヴェマリア2曲が演奏されます。
その作曲をされました村上裕昭様よりメッセージを頂きましたので、公演に先立ち公開させて頂きます。
福井敬さんとは大学・大学院と同級生で、数年前に開かれた同窓会の折に福井さんの為に曲を書きたい強い願いをお伝えし、それが実現する事となりました。同じ釜の飯を食べた友人ですから、彼の声は頭の中にいつでも再生出来ますし、創作は彼の声を思い描きながらの事でしたが、不思議な程に思い出すだけで音楽が溢れ出て来るのでした。彼の日本人離れした柔軟性と深みに富んだ稀なる輝かしき美声を想い、イタリア・カンツォーネ風の晴れやかな曲想に仕立てています。
村上裕昭
福井敬スペシャルリサイタルのプログラムが決定いたしました。今回のリサイタルのハイライトは、2部の、バッハこのロ短調ミサの「ベネディクトゥス」に続く、「アベマリア」2曲です。
この「アベマリア」は作曲家の村上裕昭さんが福井さんをイメージして作曲された楽曲で本邦初演となります。
そこで、どうしても皆様にこの「アベマリア」をお聞きいただきたく、2部だけお聞きいただける「2部からチケット」を販売する事にしました。 事前申し込み&事前入金(11月15日木曜日まで)3000円です。1部終了予定14時40分ごろにお入りいただけます。
残席がもう31席しかありませんので、限定10席とさせて頂き、お席はお選びいただけません。 もちろん、通常のお席(福井敬ネット会員価格 5000円 ペア9600円)もございます。
第1部 ENISHIを歌う
たあんきぽーんき 作曲 中田喜直・作詞 山村暮鳥
ちいさい秋みつけた 作曲 中田喜直・作詞 サトウハチロー
歌をください 作曲 中田喜直・作詞 渡辺達生
春なのに 作詞・作曲 菅野祥子
恋のかくれんぼ 作曲 武満徹・作詞 谷川俊太郎
ぽつねん 作曲 武満徹・作詞・谷川俊太郎
死んだ男の残したものは 作曲 武満徹 作詞 谷川俊太郎
小さな空 作曲・作詞 武満徹
第2部 MAHOROBAを想う
海のストルネッロ チマーラ
『ロ短調ミサ』より バッハ "ベネディクトゥス"
アヴェ・マリア/村上裕昭
アヴェ・マリア/村上裕昭
歌劇『愛の妙薬』より/ドニゼッティ "人知れぬ涙"
歌劇『ランメルモールのルチア』より/ドニゼッティ "我が祖先の墓よ"
10月1日 毎年恒例のNHKニューイヤーオペラコンサートの出演者が発表されました。
福井さんは通算21回、14回連続のご出演となります。
詳しくはNHKニューイヤーオペラHPへ→https://www.nhk-p.co.jp/event/detail.php?id=919
印象に残った曲 ベストテン
INISHIEの楽
1 アマリッリ美しい人
2 恋する人(楽しい人生)
3 ロミオとジュリエット(アンコール)
4 君の自由を奪った男が
5 そよ風吹けば(アントネッロ器楽演奏)
ENISHIの歌
1 「道化師」より”衣装をつけろ”
2 「アイーダ」より”清きアイーダ”
3 春なのに
4 海のストルネッロ
5 秋桜
・現代のオペラスターの福井さんがどんな風に古楽曲を歌われるのか楽しみに参りました。もともとバッハや古楽が好きで、福井さんが言葉を大切に、また響きがとてもあって歌われていてよかったです。ますます新境地へチャレンジして楽しませて下さい。
・福井先生の懐の深さに感動しました。。どんなジャンルの歌も様々に歌い方、発声を変えて歌われているところ、50歳を過ぎてなお素晴らしい輝きと声量を維持されてる・・・奇跡的に思います。
・アントネッロさんとのCD第2弾、第3弾を出してください。福井さんに子守唄を歌って頂きたいです。大阪でも年2回公演して下さい。
・いろんなタイプの曲が聴けてとてもよかったです。いつもアリアを中心に聞いていますが古楽とも相性良いのに驚きました。福井さんがとても楽しそうに歌ってらしたのが印象的でした。司会もお上手でとっても楽しかったです。
・びわこホールに来て下さい。
・古楽器久々に聴き、音色がとてもよかった。福井さんのいつも変わらぬ歌声と軽妙さ、サービス精神とお人柄あふれるエンターテイナーぶりに拍手です。
・アンコール曲のロミオとジュリエットも素晴らしかったです。アントネッロの皆さんの音色もとても素敵でした。オペラのアイーダも楽しみにしています。
・初めてでしたが、とても感動いたしました。まったくど素人の私でしたがなぜか涙がこぼれました。ありがとうございました。
・福井さんの声量のすばらしさに加えて、ホスピタリティーあふれる演出に喜んでいます。日本の誇るスーパーテナーにも関わらず、ポピュラーソングも歌って頂き、より親近感を抱きました。
・福井さんとアントネッロの表情が小ホールなのでよく見える。イタリア語の細かいニュアンスは解らなくても自然と曲に入っていけて、思わず涙が出ました。古楽というと学問的なイメージがあるけれど、今回はロック的な部分もあってとても楽しかった。
・古楽器とのコラボよかったです。
・アントネッロの演奏も素晴らしく、途中地震のハプニングもあり、思い出に残るリサイタルでhした。福井さんのお声は年々素晴らしい響きになっているようで驚きです。
皆さま
昨日は、福井敬スペシャルリサイタル2018in大阪に多数ご来場いただきまして、ありがとうございました。感謝申し上げます。
今回は、第1部に古楽アンサンブル アントネッロを招いてのバロックのプログラム、チェンバロ、リコーダー、ヴィオラ・ダ・ガンバの古楽器の音色と即興演奏を存分にお楽しみいただき、彼らとのアンサンブルで愛を謳歌するバロックの歌を演奏いたしました。 そして、第2部はJーpopの代表 さだまさしの秋桜から、オペラアリアまで。時代やジャンルに拘ることなく、皆さまに楽しんで頂ける名曲を集めました。まさに、福井敬七変化という形でお届けしたのですが、いかがでしたでしょうか?
福井敬.net主催公演も、東京公演はついに10周年を迎え、次の東京では久々に私のソロのリサイタルを予定しております。一人だけの真っ向勝負に挑む所存です。更に皆さまにご満足頂けるようますます精進してまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
福井敬